Aimi

黄金のアデーレ 名画の帰還のAimiのレビュー・感想・評価

3.8
ちょうど時間が合ったのでたまたま足を運んだ作品。これが良い作品だととてもいい掘り出し物に巡り合ったなあ、なんて気持ちで満たされて幸せな気分になる。
本作はそんな掘り出し物作品だった。

世界中の美術館に当然のように展示されている数多の絵画。その絵画の背景には、それを描いた画家、その中に描かれたモデル、彼らを取り巻く人々の想いや、人生、歴史。もろもろがぎゅっと封じ込められているんだな、と、まざまざと思い知らされた。絵画は好きでよく美術館にも足を運ぶけれど、そこに想いを馳せたことはなかった。

アデーレの絵画には、ホロコーストの負の歴史がぎゅっと詰まっていた。煌びやかに輝く黄金色の裏に秘められたそれは、現在と過去を行き来する中でじっくりと丁寧に描かれていく。その描き方が実に丁寧で、ホロコーストによってアイデンティティーや財産、家族、故郷、全てを奪われ、手放さなければならなかった人々の悲痛な叫びが心に伝わってくる。その歴史は過去のものかというとそうではなく、その断片のようなものや、それによって得たものに対する人間のエゴがまだ現代にも根付いてしまってるんだということがアデーレを巡る国際裁判の中で見えてくる。
これらに直面したからこそ奮い立った魂もあったし、ラストは心が震えて泣いてしまったりもしたけど、未だに持ち主の手に戻れない絵画が何万点もあるという事実といい、人間ってほんとにしょうもない生き物だなと我ながら悲しくて仕方なくもなる。観終わった後複雑な気分になってしまった。

この絵画を巡る論争も含めての負の歴史なんだと思う。だからまだホロコーストも完全な過去にはなっていなくて、まだまだ現在に強く強く根付いているし生きている。持ち主の手に帰ることのできる絵画が、ひとつでも多く増えていきますように。