あーさん

黄金のアデーレ 名画の帰還のあーさんのレビュー・感想・評価

4.2
久々に思い立って映画館で鑑賞。

人生も終盤に差し掛かったアメリカ在住の主人公マリアが姉の死をきっかけに封印していた戦争時の悲しい過去と向き合い、自身の伯母が描かれたクリムトの絵「黄金のアデーレ」を母国であるオーストリア政府を相手に取り戻す物語。果たして彼女が本当に取り戻したかったものとは…?

とにかくヘレンミレンが素敵だ。
82歳のマリアを70歳のヘレンが演じるのだから、本当のマリアはもう少しお年を召していらっしゃるはずだがそこは映画なので。。
何よりヘレンが醸し出すスクリーンに溢れる品の良さはこの映画の格調を明らかに高くしている。スーツを着てハイヒールを履いてオーストリアの街を情熱に突き動かされて歩き回る姿はまさに闘う女!気高さ、パワフルさ、ユーモアのセンス、身につけている物…パーフェクト‼︎間違いなくキャストは大当たり!名女優という言葉はヘレンミレン、この人の為にあるのだろう。目がハートになってしまった…。
彼女を支えるライアン・レイノルズ演じる美術の知識全くゼロの駆け出し弁護士ランディ・シェーンベルクも素晴らしい。自分のルーツを自覚してからそれまでの頼りなさが姿を消し、人が変わったように本気になる。気が弱いかと思わせて実はハートはとても熱いのだ。マリアとのやりとりも面白く、バディものとしてもなかなか魅力的。子どもの頃同じモノを見ていたって結構重要なんだなぁ!好きなエピソードの一つ。彼の奥さんがまた良い。自分のことよりパートナーの仕事に対する思いを優先してあげるってなかなかできないこと。。美人ではないけれど笑顔がすごくチャーミングな最強の味方!オーストリアで出会った記者にも彼らに協力する理由があった。ダニエル・ブリュールの内に秘める抑えた感じが良い。女性判事役がどこかで見たと思ったら、、ダウントンアビーのコーラ!(監督の奥さん)

実際のマリアはかなり裕福な家の出身。自宅に多くの文化人が出入りする。クリムトもその一人。華やかな社交界、きらびやかな生活を垣間見ることができる。ダンスホールのある家、見るからに庶民からすると桁違いであろう調度品や装飾品、高価な楽器…には見とれんばかり。。そこから一転、ナチスが台頭してくる所はやはり胸が痛む。幸せであればあるほど奪われた時の傷は大きい。回想のような形で交互に現代とセピア色の第二次世界大戦下の場面が進んでいくのがマリアの心理に添っていてとても自然でわかりやすい。

個人が国を動かすなんて簡単にできることではない。片や80代のおばあちゃんとペーペーの実績のない弁護士。しかも取り戻すのは国宝級の名画。。しかし人が自分の思った以上の力が出せる時というのは何とかしたいという思い、強い強い動機がある時だと思う。そういう人達の熱意がだんだん大きくなって最高のクライマックスを迎える。。

実話なので立場の違いから映画の内容に関してそうじゃない!と異議を唱える人もいるだろう。所有権の問題だけに現実はとても複雑である。撮影にはとても協力的だったらしいが長年手元にあったオーストリアのモナリザとも呼ばれる絵画を手放すことになり、オーストリアの人々は複雑な心境なのかもしれない。しかし物語としてはとてもよくできていて、戦争に対して恨みはあってもそれを乗り越えようというマリアとランディ二人の前向きな成長物語として素直に楽しめたし、心から感動した。

つい先日モネ展に行ったばかりでもあり、実物のアデーレを観にNYに行きたくなった!!

追記

映画館では年齢層の高さをとても感じた。せっかくのマリアの台詞「人間は忘れてしまうのよ、特に若い人は。。」が届かない…。
もっと色々な世代の人に観てもらいたい。とても良い映画なので!