ヘレン・ミレンが美しいです。
御年70歳とは思えないスタイルの良さ、上品な佇まい、凛とした態度、そのすべてが物語を魅力的にしている。
ナチスに家族も財産も奪われた女性が人生の終盤に絵画の返還を求めオーストリア政府に闘いを挑む。
マリアの結婚式で円陣を組んでダンスするシーンでは胸が一杯になった。この幸せが直ぐに壊れる事が分かっているから。
貧しい時代をくぐり抜けやっと成功を掴んだのに、理不尽な迫害で命を奪われるより大事な娘だけはアメリカに亡命させる父。
長引く裁判の中、思い出すだけでも辛い過去にすっかり疲れてしまうマリア。 「前に進むことも大事」と自分に言い聞かせるように裁判を諦める決心をする。この気持ちはよく理解出来る。誰だって穏やかな日常を取り戻したいのだ。
最後にオーストリア側の申し入れにきっぱりとNOを突きつけたマリアの台詞は印象的。絵画の返還よりも強くマリアが求めていたもの。それは家族を引き裂かれ、人間の尊厳まで奪われた過去に対するオーストリア側の謝罪だったのだろう。
マリアの結婚相手役はマックス・アイアンズ。何とジェレミー・アイアンズの息子だそうです。
ケイティ・ホームズが逞しい奥様演じてます。
因みに「アデーレ・ブロッホ・バウアーの肖像 l」は化粧品会社のエスティー・ローダーの会長ロナルド・ローダーが所有しているそうです。
追記
邦題にガッカリさせられることが多いのですが、「名画の帰還」という言葉は不要だったのでは。面白味半減で、ある意味邦題でネタバレ。