マピンターズボーン

黄金のアデーレ 名画の帰還のマピンターズボーンのレビュー・感想・評価

3.3
【官能的とエロスと死の香り】

クリムトと言えば日本でもミュシャと並び非常に有名な画家だ。
官能的でエロスと同時に死の香りを漂わせる画風はたちまち人を虜にしてしまう。

無我になり貪り合う二人の舌が絡みあい
やがて二人は絶頂を迎える。

その恍惚の表情を魅せる女の顔はとても艶めかしく
生と死を同時に見ることが可能になる。
それは死の世界を垣間見るのと同義だと言えよう。
その一瞬を画に永遠に閉じ込めたのがクリムトだ。

クリムトには「黄金の時代」と呼ばれる金箔を使って作品を装飾した時期がある。
その時代に「アデーレ・ブロッホバウアーの肖像I」と「接吻」を含めた代表作がこの世に産声をあげる。

元々無名の画家であったクリムトの才能を見抜き彼のパトロンとして養ったのがこのアデーレ・ブロッホバウアーなのだ。

クリムトとアデーレの死後
ナチスのユダヤ人迫害そして贅沢品の強奪の歴史より
「アデーレ・ブロッホバウアーの肖像I」はオーストリア政府の物となる。

これはアデーレの遺言を巡りアデーレの姪であるマリア・アルトマンとオーストリア政府の長い法廷闘争の物語である。

この物語はつい最近の実話である。
過去に大切な人や物を奪い70年の時を経てナチスの亡霊はまだ世界を苦しめている。

人は「アデーレ・ブロッホバウアーの肖像I」がクリムトがアデーレへ向けた生と愛と死の贈り物であることを認識しなくてはならない。それは二人の愛の絆なのだ。

そこに第三者が彼らの意図しない時と場所で争うのだ。
その情念はどこまで流れていくのだろう?

それはクリムトとアデーレが望んだ末路なのだろうか?

エンドロールを観ながら素直に喜べない複雑な想いでいっぱいになりいたたまれなくなった。

444本目