ーたった2人の、プライドをかけた歴史への闘いー
その国の歴史とは、そこに息づいた人びとの歴史。
辛く苦しい歴史であればあるほど、その延長線上に生きる人びとが背負う歴史は熱く重い。
ナチスドイツに強引に強奪された、“オーストリアのモナリザ”と呼ばれる、クリムトが描いたマリアの伯母の肖像画 「黄金のアデーレ」の返還を求めた一人の老女と弁護士の実話を元にした映画。
ホロコーストを描いた作品でありながら、『名画の返還』という切り口で描かれた悲しい歴史が、ズシリと心にのしかかる作品。しかも、過去のことではなく、現在に至るまで、その歴史が続いているような錯覚を感じさせるシナリオが渋かった。
すべてを奪われた過去の辛い記憶と、現代にいてもなお、踏みにじられる老女の想い。
歴史を受け入れ、今を生きる人びとの歴史の精算をするために、何が正義かを語りかける作品でした。
なかなか、しっとりとした良作です。