アキラナウェイ

黄金のアデーレ 名画の帰還のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

3.8
「黄金のアデーレ」
クリムトが1906年に発表した絵画。
1941年にナチスにより強奪され、オーストリアの美術館に収蔵されていた。

詳しくない僕でも見た事はある。
この1枚の絵画にこんなドラマがあったとは…。

この絵画は自身の叔母をモデルにしたものだと返還を求め、オーストリア政府に訴訟を起こしたマリア・アルトマン(ヘレン・ミレン)と共に裁判を戦った若き弁護士ランディ・シェーンベルク(ライアン・レイノルズ)の実体験を基にした映画。

金箔、銀箔で光り輝くアデーレ。
思わずため息が漏れる。

クリムトがこの絵画を描いたマリアの幼少期、
第二次世界大戦のナチスによる侵略、
そして現代、
3つの時代を丁寧に綴る素晴らしい映画でした。

歯に衣着せぬ物言いのマリアを演じるヘレン・ミレンがカッコいい!ペロッと毒っ気のあるユーモアを吐く、素敵なお婆ちゃん。

対する若手弁護士ランディ役のライアン・レイノルズ。恐らくご本人役に寄せる為と思われる差し歯を入れており、いつもの(ましてやデップーの)印象とは随分と違う。

この2人のやり取りが何とも小気味良い。

そして、頑なにオーストリアに行く事を拒むマリアの姿に、かの時代、ナチスが行った事が如何に悲惨だったかを知る。

ランディもまたオーストリアにルーツがあり、ユダヤ系である事から、最初は及び腰だった彼も、絵画返還の活動に熱を帯びてくる。

オーストリア政府を相手取った法廷劇だけなら、そこまで面白くないんだけど、この映画の素晴らしいのは過去の回想シーンをきっちり描いているところ。

祖国オーストリアに両親を置いて、命からがら逃げ出してきたマリア。絵画も装飾品も、それぞれが大切にしてきた宝物を容赦なく奪っていくナチス軍。この辺りの描写がラストの感動を一層引き立たせる。

ふと対馬仏像盗難事件を思い出した。
韓国人窃盗団により重要文化財の仏像2体が盗まれた事件。

韓国側は元々倭寇に略奪されたものと主張。
いやいや、マリアお婆ちゃんを倣ってきちんと裁判しましょうや。