SatoshiFujiwara

完全なるチェックメイトのSatoshiFujiwaraのレビュー・感想・評価

完全なるチェックメイト(2014年製作の映画)
3.8
チェスのことはまるで分からんが、これは面白い。白眉であるボビー・フィッシャーとボリス・スパスキーが対戦するシーン。盤上のゲームゆえ派手な動きがあるでなく、チェスのルールを理解している人が観たならば試合の進展も少しは分かるのだろうが、その地味さの中に演出されている両者の表情、視線、仕草、ちょっとした体の動きと試合展開の読めなさ加減が見事に融合し、下手なアクション映画よりよほどアクション映画たり得ている。また、冷戦時代における米ソの国家的威信にかかわる対戦(代理戦争)という意味あい(なんせニクソンやキッシンジャーがボビー・フィッシャーに電話してくるくらいだ)、チェスというゲームが極度の緊張と集中を要求するあまりフィッシャーの精神の均衡が乱れ、パラノイア的な性向があらわになり陰謀論(反共、反ユダヤ)にのめり込んだり、という描写が時代の空気を的確にうつしこんでいる。しかし普通の人には見えないものが見えてしまうのが天才だけれど、これは周囲の人には驚き、発見、喜びをもたらすが本人にしてみれば背負わされた「業」ではないか。そんなことを考える。ちなみにこれは実話です。