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完全なるチェックメイトのbutasuのネタバレレビュー・内容・結末

完全なるチェックメイト(2014年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

実在のチェスチャンピオンを描いた伝記映画。非常に精神的に不安定な主人公フィッシャーを演じたトビー・マグワイアが素晴らしい。

微かな音が気になるといって試合を放棄したり、KGBやCIAに盗聴されていると信じ込んだり、とにかくフィッシャーの病的な精神状態が延々とクローズアップされる作り。「いくら天才だと言ってもここまで精神に異常をきたしていたらもう勝てはしないだろう」とか「結局自分が負けることへの恐怖やプレッシャーから追い詰められてしまった弱い精神力の持ち主なのでは」とか思いながら観ていた。

ところが終盤、フィッシャーの望み通り「観客無し・カメラは固定1台・無音の卓球室での対局」を実施すると、なんと彼はソ連の世界王者スパスキーに勝ってしまうのだ。そして調子を取り戻したフィッシャーはその後の対局で誰もが予想できない手をうち、スパスキーは拍手して降参の意を示す。この展開にとにかく心を打たれてしまった。なんてドラマティックな実話なのだろう。

途中でスパスキーが同じように盗聴や騒音を気にするシーンが入るが、彼の場合はソ連だから本当に盗聴されていてもおかしくないし、対局中の音も実際に虫が飛んでいた、という比較も面白かった。

鑑賞後に色々と調べたのだが、フィッシャーはその後もかなり波乱万丈な人生を送ったようだ(日本に滞在し事実婚の日本人妻がいたのにも驚いた)。もっと彼について知りたいと思わせる、とても良い映画だった。
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