天豆てんまめ

教授のおかしな妄想殺人の天豆てんまめのレビュー・感想・評価

教授のおかしな妄想殺人(2015年製作の映画)
3.4
原題は「Irrational Man(非合理的な男)」で邦題は「教授のおかしな妄想殺人」。どうなんだろうか、、この魅かれないタイトル。ホアキン・フェニックスは狂気的な突き抜けた役柄が多いので、その狂気性を内在させた哲学教授役には説得力があるし、彼に魅かれる女子大生のエマ・ストーンも知的好奇心旺盛な感じとチャーミングさを兼ね備えて、相変わらずうまい。特にホアキン教授の真実を知った時に彼女の狼狽ぶりには、うまい!と膝を打った。

ホアキン教授は斬新な論文と提言で哲学教授として名は知られているが、いつも憂鬱に囚われ、自殺も常に考えている。お腹がでっぷり出て、顔もげそっとしてるのだけど、なぜか女性問題にはことかかない笑 陰鬱な教授が知的・深淵に見えて「影がありミステリアスな」感じになるのだろうか、、ウディ映画にはそんなモテなそうでモテる変化球男が多いのだが。そんな彼が新たに来た大学にエマ・ストーンはいる。

彼の狂気性が垣間見れる印象的なシーンに、学生のホームパーティで自宅の銃を見つけた学生がロシアン・ルーレットの説明を冗談交じりで女子にしていたら、その銃に手を伸ばし、おもむろに自分のこめかみに当て、カチっと引き金を引く場面。このシーンで彼の闇の深さがよく分かる。学生はもちろんひ~~~!!っっとなる。そんな彼がタイトルで描かれたある男への妄想殺人への計画をし始めると、俄然生気が溢れていく。不能だったリトルホアキンも復活する笑 エマ・ストーンとの恋にも邁進。言い寄られる人妻教諭とも、、後はホアキン教授版「罪と罰」と言った感じで、ストーリーとしては定番だ。

ホアキン・フェニックスのアブナイ演技とエマ・ストーンのチャーミングさと理屈っぽいが一癖ある会話劇で楽しめるのだけど、サスペンスとしての展開、ストーリーに驚きがない。この「罪と罰」モチーフをウディ・アレンはよく使うのだけど、その中では近年の傑作「マッチポイント」に加えて、「ウディ・アレンの重罪と軽罪」はリアルな怖さと深淵さが漂い、非常に面白い。なかなかの傑作なので興味ある方は是非。