哲学的に考えさせられる映画で感慨深い話だった。
一連の殺人ストーリーを単なる物語として観てるだけでは、物足りないと思う。
この映画の一番の面白さは、哲学的な観点で観る人がどう感じるかだと思う。
エイブが大学で哲学を教えているシーンも結構ポイントで、カントの道徳理論、キルゲコールの死に至る病、サルトルの実存主義とかについての話がサラッと出てくる。
これらの哲学の考え方を理解したうえで、この殺人ストーリーを観ると、人生の意味を見失い、孤独で無気力な暗闇に陥っていたエイブが生きる目的を見出した動機はそもそも人間として正しいことなのか?
そして、思い描いているだけでは実現しないから実行するという彼の哲学は、その目的においては間違えではないか?
じゃあどんな目的なら正しいのか?
そもそも生きる目的にいいも悪いもあるのか?など、観る人の経験や考え方でいろんな捉え方ができる深い話だと思う。
そして教え子のジルがとった行動もまたカントの道徳理論に当てはめると興味深く、最後のシーンの彼女のナレーションの一言に凝縮されている気がする。
殺人ストーリーなのに、全く重くならず、むしろオシャレな映画として観ていられるのは、この監督の音楽的センスが素晴らしいからに他ならない。