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真夜中のゆりかごの東京キネマのレビュー・感想・評価

真夜中のゆりかご(2014年製作の映画)
3.5
スサンネ・ビアだし、デンマークだし、そりゃ暗いよなあ~、と思って観始めましたが、予想通りの暗さ。 現世の不条理とは言え、辛いですう。。。

これ、外形的には犯罪なんですが、誰も悪人が居ないんですよ。 主人公の犯した罪を誰も責められないし、むしろシンパシーを感じてしまうんです。 だから見終わって鬱気分になっちゃうんですよ。。。

でね、結局、幸せとは何さ、という話なんです。 デンマークは国連の幸福度調査でも必ず上位にくる、まあ所謂世界が目指す一つの国家モデルとはなってはいますけど、実は相当社会問題が深刻化している国ではあるんですね。 尚且つ、暗いし、楽しそうな社会に見えない。(まあ、映画やネット記事程度の情報なんですが・・・)でね、どうしてそうなるかと言えば、結局、この国の体制。 つまり、旧ソ連やキューバが目指したけど失敗してしまった社会主義体制、それも資本主義の上に乗っけた社会主義体制、それがダメなんだろうと思うのですよ。

歴史を辿れば、つまりジョン・ロックの『社会契約説』ですよ。 これが一般的には近代民主主義の始まりとはされていますが、この時からですよ、国家(王権)は自由を束縛するもの、だから、自分たちの考える自由へ(それも設計主義的に)、自由を束縛する国家を破壊すれば真の幸せ(自由)が手に入る、そのためにはみんなの意識をファシズム(まとめる)して新しい国家を作ろう、という全体主義になったのは。。。いわゆる、大陸合理論の流れです。

フランス革命がそうです。 王様殺せば自由になる、幸せになる、で殺して、果たしてどうなったかってことですよ。 その後、ヘーゲルが出て、益々全体主義化して、右に行った人たちはファシズムになり、左に行った人たちはコミュニズムになって、で全部失敗した。

問題は、そこからなんですが、今や恥ずかしくてファシズムやコミュニズムなんて言えない時代ですから(悲しいかな我が日本には沢山いますが)、自分の素性を隠して社会主義者に擬態した訳ですよ。 そしてですよ、今度は社会主義者がまた恥ずかしいからって、リベラルだと言い出した。(立憲民主党みたいにね)

はっきり言えば、こういう人たちが社会を破壊するんです。 みんなが幸せになる国、なんてあり得ないでしょ? だって、みんなの考えている幸せが違うし、違うってことは基準やルールが出来ないってことですから。 でもね、ヨーロッパには伝統的にこういった社会主義思想は残っているんです。 それでも日本と違い、国家破壊主義者はいませんがね。。。

だから北欧が陰鬱で不幸せに見えるのは、頭の良い人が考えた「幸せな国」の形を強制した結果、「不自由」を強制しているように見えるからなんです。 この映画、そのまんまですよ。 ◯◯しなければいけない、という設計の「自由」は、結局こういった悲劇を生むんですって。。。
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