アキラナウェイ

ヴィクトリアのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

ヴィクトリア(2015年製作の映画)
4.7
ワンカット。
長回し。
僕はそこに堪らなくロマンを感じる。

キャストも制作スタッフも、ミスは許されない緊張感。その道のプロフェッショナルが集まり、その瞬間に懸ける意気込み。

「1917 命をかけた伝令」のレビューでも同じ事を書いた。あちらはワンカット風だったけど、今回こそは正真正銘!!

脚本は12ページのみ。
殆どの会話は即興芝居。
予定外のハプニングが起きても撮影続行。
カメラは…止めない!!

予算上許された撮影回数は3回。
1回目のテイクは俳優達が慎重になり過ぎた。
2回目は逆に、狂った様な演技になった。
そして3回目。撮影は成功した。

凄い!!素晴らしい!!
この映画、めちゃめちゃ好きだッ!!

スペインからドイツにやって来た女性ヴィクトリア。3ヶ月経つが、友達はまだ出来ない。クラブで踊り、明け方の4時過ぎ、そこで出会ったゾンヌ、ボクサー、ブリンカー、フースという4人のドイツ人男性達に誘われ、飲み明かす事に。

ヴィクトリアの運命の歯車が
静かに狂い始める。

人生は選択の連続である。
〜すれば良かった。
もしくは、〜しなければ良かった。
この映画はまさに、その選択の連続性を強く感じる。
しかし、後悔先に立たず。
事態はどんどん悪くなる。

ヴィクトリアがドイツ語に明るくない為、互いに母国語ではない英語でしか意思疎通が出来ない事もまた不運。

嗚呼、堪らないッ!!
カメラワークに痺れる。

クラブの限られた光量の中で、アルコールに酔う感覚に近い揺れる映像。まだ暗い夜道に繰り出した連中の、さり気ないやり取りを映し出すドキュメンタリー的な映像。疾るキャラクターの背中を追い駆ける躍動的な映像。

観る人によっては退屈なシーンもあるだろう。でも、その無意味に見える一瞬一瞬も演者は演技を続けている。

観る人によってはヴィクトリアは危機意識の低いバカな外国人に見えるだろう。でも、これは物語だから。彼女が彼女でなければ、物語は成立しない。

彼女の名前はヴィクトリア。
後戻りが出来ない彼女の人生の140分を切り取った傑作。