スプリングス

インフェルノのスプリングスのレビュー・感想・評価

インフェルノ(2016年製作の映画)
3.0
〈/真実か挑戦か/〉

【Review】
地球を蝕む人口増加を食い止めて人類の絶滅を防ぐか、それ以外の方法を探るかを問われる話。
ちなみに食い止める方法はウイルスによる無差別殺戮。
...このテーマ、、かなり深い。
それだけに、ラングドン教授らがその境界線で揺れる描写が無かったことが残念でならない。
大作映画にありがちなことだが、自分の考えが正義側だと思い疑わない主人公はなんなのだろう。今回の敵はそんじょそこらのチンピラとは訳の違う《筋の通った思想》を持っているというのに、主人公がこれでは浮かばれない。
《この行為は世界を救うのか、滅ぼすのか》
...そう思い悩む主人公の姿があって初めて、ラストのバトルが活きるというものだろうに。
悩まないにしても、悩まないだけの理由付けが欲しいところだ。この問題を《話し合いで解決しよう》などという寝ぼけた提案をされては、応援したくても出来るはずがない。
AをとるかBをとるかの選択をさせるような映画は、観客の道徳観念をどこまでアンバランスに出来るかが鍵だと自分は思っている。残念なことに、今作ではその鍵が小さすぎて見つからない。
これは主人公の置かれている状況による影響も多分にあるのだが、それにしてももう少し議論がなされてもよかったのではないだろうか。
あまりにも《勧善懲悪》に偏ったストーリー展開に、期待したものは何も見つからなかった。
ラストのバトルなどは特に残念だ。
それまでの敵側の中心人物が重要な場面で消え、最後の見せ場は誰かもわからない人物(たぶん爆弾製造者)との殴り合いになるのである。
ハラハラしない。
名前もわからないような奴に主人公は負けるはずがない...そう思ってしまうから。
思えばこの映画、全編通してハラハラする要素が乏しかった。安定しているといえば聞こえはいいが、観客がこの手の映画に欲しているのはスリルだろう。今作は、ひたすらストーリーをなぞっているだけのようにみえた。そこにスリルは、感じられない。
ここまで書いたが、嫌いな映画ではなかった。ただ、歯痒い気持ちのほうが勝つので好きな映画でもないのだろう。
僕は、気付かぬうちに敵側の計画に賛成していたのかもしれない。リスクの高い挑戦より、確実性のある真実を選びたいと思うのは、果たして罪だろうか。

【Digression】
あの闇の仕事してる怖いおじさんはすごく良かったです。
ああいったプロ意識の高い殺し屋的キャラクターは大好物ですので。
本当、スピンオフを作って欲しいレベルには好きです。