Shelby

怪物はささやくのShelbyのレビュー・感想・評価

怪物はささやく(2016年製作の映画)
4.8
パンズ・ラビリンスを手掛けたプロデューサーという所から見たくて堪らなかった作品。物語の序盤からグイグイ惹き付けられて目が離せない。美しい水彩画アニメーションとリアルの融合。そして年端もいかない少年コナーの、常に悲しみと怒りを携えた精悍な顔立ち。美しくも残酷なこの物語を見終える時にはティッシュを大量消費していたほど号泣した。

オープニングの画用紙に彩られる物語のキーとなるアニメーションの数々で早速胸を掴まれる。インクが染みるように象られていくそれ等は素晴らしく、つい感動してしまった。繰り返し何度も観たくなるほど美しい。

コナーの年齢と、小柄な体に似合わぬどこか負のオーラを放つ瞳。その理由として母親の重い病や、離婚し既に再婚している父親、全く懐けない祖母と学校での居場所のなさなど、幼いコナーにとっては辛い現実ばかり。そんななか、12時7分に突然やってきた巨大なイチイの木の怪物。
その怪物が話す3つの物語のあとにはコナー自身が話をしろとのこと。
怪物が話す物語に共通するのは、世の中の全てにおいて共通する矛盾。正義と悪は表裏一体であるということ。人間とは複雑な生き物だという現実。おとなとこどもの狭間にいるコナーには、理解できないことばかりの物語。

この物語児童書から来ているものにしては、陰鬱としたストーリーだしとにかくコナーに待ち受ける残酷な真実が物悲しい。にも関わらず、こんなにも胸掴まれ涙を流すほど感動したのはただのダークファンタジーで終わらず、しっかりとリアルを生きる私たちに向けてのメッセージを感じられたからだと思う。どう考えるかではない、どう行動するか。

映像、音楽、俳優陣どこを切り取っても素晴らしい映画だった。
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