あまんだ

怪物はささやくのあまんだのレビュー・感想・評価

怪物はささやく(2016年製作の映画)
4.0
人が生きていく上での、理想像と、自己認識の違いの心理的葛藤を受け入れ、少年の心理的成長。

大病で、母の余命が幾ばくもない事を知りつつ、きっと良くなると表面上は、言いながら、しかし心の奥底では母は助からない事、その悲しみから逃げ出してしまいたい、一刻も早く楽になりたい、その為、自分は母の死を無意識的に望んでいるのではないかと、自らにおののく少年。
大人であれば、その気持ちに折り合いをつける事もできるであろうが、コナーはまだ13歳故、その自分を受け入れる術を持たない。
その為、級友を挑発し殴られると言う無意識な自罰行為、暴れて部屋をめちゃめちゃにするという破壊衝動で内なる自分と折り合いをつけようともがく。
大人にならざる負えない少年のその様が、胸を打つ。

誰もが持っている負の感情に向き合い、受け入れ、人の多面性に気づく。
大人になるプロセスだが、初めて「それ」に接した少年は、とまどい、恥じる。負の感情を怪物になぞらえ、反発から徐々にその声に耳を傾け、やがて向き合う。

ダークファンタジーかと思いきや、成長譚として、非常に丁寧に描かれた傑作であった。
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