アキラナウェイ

怪物はささやくのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

怪物はささやく(2016年製作の映画)
3.7
滲むインクは心の中で広がる闇
本当はわかっているけど認めたくない真実
怪物はささやく…。

「真実を語れ」と。

病魔と闘う母(フェリシティ・ジョーンズ)と暮らす13歳の少年コナー(ルイス・マクドゥーガル)は悪夢に悩まされていた。ある夜少年の前に現れる怪物は、「3つの【真実の物語】を語るから、4つ目の物語はお前が語れ」とささやく。

リーアム・ニーソンがモーション・キャプチャーと深みのある声で演じる怪物。

これ、アイアムグルート!?
グルートのお父さんですか?
きっと同じ種族ですね、これね。

怪物が語る物語で展開されるアニメーションがたまらなく美しい。このタッチはかなり好み!

そうか、お母さんもコナーも絵を描くのが好きなんだね。

みるみる痩せて弱っていく母親を「ローグ・ワン」のフェリシティ・ジョーンズが、厳格な祖母をシガニー・ウィーバーが好演。

母の病気だけではない。
学校に行けば虐められ、祖母と暮らせば居場所がなくなる。
コナーを取り巻く環境は実に厳しく、抱えた闇がどんどん自分を蝕んでいく。滲み広がるインクの様に。

小さな身体で大きな苦しみを抱え、自分だけでは真実と向き合えない。

そこで怪物がささやくのは、この世の中は勧善懲悪ではない事や物事を多角的に見る事の大切さ。

次第に少年は困難に立ち向かう強さを身に付ける。

これは、少年が母親との別れを受け入れ、決別出来るまでの物語。

生きていれば必ず訪れる大切な人との別れの時。
果たして僕らはその現実に向き合えるだろうか?
その時、怪物はささやくのだろうか?

独創的で繊細に少年の心の葛藤を描き出す良作。