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Looking for Johnny ジョニー・サンダースの軌跡のKKMXのレビュー・感想・評価

3.5
 自分より少し上の世代のパンク好きにとって、ジョニサンはどうやらカリスマだった模様。やたらとレスポール・ジュニア使いが多かったし。
 しかし、自分の世代になるとあまりジョニサンジョニサン言う人も少なくなり、個人的には『L.A.M.F』くらいしか聴かないミュージシャンでした。本作を観て改めてソロやドールズを聴いたけど、やっぱりあんまりハマらなかった。


 本作はそんなジョニサンのドキュメンタリー。内容は思った以上に(想像通りか?)ドラッグ、ドラッグ、ドラッグ。とにかくずっとドラッグの話でした。
 ドールズ初期にイギー・ポップ大先生からヘロインを教えてもらったジョニサン。それ以後、基本的にずっとヘビーなジャンキーとなります。バンド組んでもドラッグでダメ、結婚して子供を儲けてもドラッグでダメ…それでドラッグ断ちを試みるもすぐドラッグやっちゃってやっぱりダメ…とにかくずっとこんな感じ。ドラッグを断ち切ると宣言するジョニサン。その数日後、知人がジョニサンに会ったところ、遠くからもわかるほどコカインの匂いを漂わせいた…とかダメにもほどがある。ジョニサンは38で死にますが、むしろよく38まで生きたな、というレベルでした。

 そして、ジョニサンの人生はぜんぜん華やかじゃないのが侘しくてグッときました。ジョニサンはミュージシャンとして評価されていましたが経済的成功とは無縁で、とりあえずずっと貧乏そうでした。カネをせびる話もあって、かなり惨めな印象です。
 キース・リチャーズ大先生に憧れていたジョニサン。周囲の人に「キースは成功してからジャンキーになった、アンタとは違う」と言われていて爆笑!逆キースとか言われてましたね。
 ロックスターとドラッグといえば光と影。しかしそんなシケた人生のジョニサンはぶっちゃけ影だけでした。

 はっきり言ってカスのジャンキーでしかないジョニサンですが、終生周囲の人たちが支援してくれていました。意外と性格が良かったのかな?MCで笑わせるのが得意とのことだったので、愛嬌があったのかもね。とにかく弱っちい男なので、周りがほっとけなかったのかもしれません。しかし、デヴィッド・ボウイの支援を利用して復活を遂げたイギー大先生に比べて、ジョニサンはまったくダメでした。こんだけ支援してくれたんだからちっとは頑張れよジョニサン!
 この逆キースの姿に俺は思わず本家キースのくたばったブライアンにかけた言葉『まぁ、長く生きられないヤツもいるってことさ』を連想しましたよ(というか死んだ元バンドメイトによくこんな言葉吐けるなキース、最高!)。ジョニサンは本当に長く生きられない男でしたね。よくまぁ38年も生きれましたよ。この生き方で38は超長生きですよ。


 ジョニサンの悲痛な人生の背景は、父の不在および機能不全家族で育ったことのようです。安心感が無くて、律するとか踏ん張るとかを学べなかったんだろうなぁ…その辺の描写はサラリでしたが、もう少し掘って欲しかったです。
 相棒のドラマー、ジェリー・ノーランに父親を投影していたという証言はかなり驚き。年齢を確認すると6歳上か…なるほど。とはいえ、ジョニサンの成長のなさを鑑みると、ジェリーもジョニサンの父的な役割をこなせるほど成熟してなかったのかもしれないですね。
 ジョニサンの愛情飢餓は実にヤバい。娘ができて「これで俺を裏切らない女が現れた」と言ってましたから。親になってはイカンね。悲しい背景があるけど、ジョニサンの場合出てくる逸話がかなりクズなので、あんまり可哀想とは思えないんだよなぁ。やはりファンじゃないとこの手のタイプには視線が厳しくなっちゃうね。

 死因がオーバードーズなのかどうかも不明だったり、死んだ時にギターや財布が盗まれたりと、死に様も散々。死因も良くわからず、白血病を患っていたり、報告書にはエイズの可能性も記されていました。これだけのジャンキーで91年死去ですからエイズはあり得ますね。とはいえ、死因はともかく、本当に寿命だったんだな…としか思えない最期でした。

 改めて思いましたが、ジョニサンはマジでBorn To Lose でした!俺はタフなロッカーが好きなので、負け犬で生まれてもLive To Win するモーターヘッドのレミー大先生の方が圧倒的に好きですね!ジョニサンは今後も『L.A.M.F』しか聴かねぇな。
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