特濃ミルク

ファンシイダンスの特濃ミルクのレビュー・感想・評価

ファンシイダンス(1989年製作の映画)
3.6
 実家の寺を継ぐために1年間仏道修行をすることにした主人公。バンドが趣味であり、ちゃんと彼女もいるという、俗世の煩悩に浸かりきった主人公は、同じく金や食への煩悩のかたまりである若者たちと厳しい禁欲生活を送る。果たして立派な住職になれるのか。なんか全体を通して漫画みたいなノリだなぁと思って調べたら漫画が原作だった。
 修行僧の生活という、一般人にはあまり馴染みのない題材なので、(魔法や宇宙人やらが出て来なくとも)これもある種の異世界体験に近い。実際に呪文のような、わけの分からない仏教用語も沢山出てきて混乱するのだが、そんな中でも人間の煩悩と葛藤という、普遍的なものを描いているので純粋に楽しめる。
 人間はなかなか煩悩を断ち切ることは出来ず、欲に振り回される弱い生き物だ。そこで悩み苦しみ悶えても、結局はすぐ同じ答えに回帰する。「人間は欲深い生き物だ」という答えに。
 ただそれが苦しい修行の末に絞り出した答えならば、それも一つの「悟り」なのではないか。そんなことを思った。
特濃ミルク

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