TAK44マグナム

セルのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

セル(2015年製作の映画)
2.8
スマホを燃やせ。


スティーブン・キング原作のゾンビパニックホラー。
主演は、ジョン・キューザック、サミュエル・L・ジャクソン。

正確にはアンデッドなゾンビが出てくるわけではなく、「クレイジーズ」や「28日後...」の様に気の狂った人間が襲ってくるタイプ。
本作で人々を狂人にする原因は「謎のパルス」です。
はじめは携帯電話を介してパルスが脳を「書き換え」ますが、後半になると進化して、パルスが狂人の口から発せられるようになります。
パルスが発せられるとピーピーガーガーという音がするので、なんだか懐かしの(かつてコンピューター通信で使われていた)音響カプラーを思い出してしまいましたよ。
昔はパソコンデータはカセットテープが記憶媒体でしたが、ゲームをカセットデッキにかけるとピーガーガーと嫌な音が聞こえたものです。
まさか、あの音を聞いたら脳みそをリライトされてしまうとは!
「マトリックス」でエージェントがマトリックスの住民をハックする時と似ているかもしれません。


空港に降り立った主人公が家族に連絡をとっていたところ携帯の充電が切れ、
それが明暗をわけます。
周囲の携帯使用者が突如として頭を抱えて苦しみだし、次の瞬間には阿鼻叫喚のパニックが発生、空港ロビーは騒然となります。
携帯で通話すると速攻で気が狂い、人を襲ったり自殺したりと、まるで催眠術にでもかかったようになってしまうのです。
間一髪助かった主人公は空港を脱出、冷静そうな地下鉄の運転手と共に自宅へと避難します。
そこで同じアパートの住人とも合流し、主人公は離れて暮らす家族の元へと急ぐのでしたが・・・


携帯電話が人を狂わすというアイデアは面白いですね。
そろそろ日本でも5G時代に突入ということで、あながち有り得なくもない設定だなと思いました。
実際、強力な電波は人体に何かしらの悪影響を与えかねないらしいですし、5Gが免疫機能を害する可能性も研究されているという話です(あくまでも噂の域をでませんが)。

前半に見られるパニック描写は、制御不能な状況をうまく掴んでいて、この手の映画が好きな方ならヤンヤヤンヤと楽しめるでしょう。
口から泡を吹いて、ピーガーガー言いながら誰彼構わず襲いまくる狂人の群れ。
いや〜、たまらんですね。
「処刑軍団ザップ」の規模を大幅に大きくした感じ。
でも、そういう場面が少ないのが玉に瑕。
CGがかなりショボいのも冷めます。
きっと低予算なんでしょうね。
旅客機の墜落とか、狂人の群れに火を放つところなど、あまりの安っぽいCGにちょっと驚いてしまったほどです。
折角のラストも、ひと昔前のテレビゲームみたいなCGに興醒めさせられてしまいました。

しかしながら、本当の難点は別にありまして、曖昧でフワッとしたラストがかなり意味不明なのがキツい。
もしかしてコレって夢オチ?と思ってしまいましたが、夢オチというわけではないのかな。
何だか結局のところ、どんよりどよどよと絶望的なオチでしたよ。
皆んなの夢にでてきた「赤いフードの男」は誰だったのだろう?
もしかして、これは異星人か何かの侵略で、あらゆる人間に同じ「恐怖を具現化したビジョン」を植えつけたのかもしれません。
それが、赤いフードの男なのかも。
何だかさっぱり分かりませんが・・・(汗)

中盤以降は端折りすぎというか、説明不足のままラストまでいってしまうので、些か唐突。
ネットでの感想をいくつか読んでも、煙に包まれたように訳が分からないという感想が多いですね。
膝を打つような考察をされている方も見かけません。
原作だともっとキチンと深めに描かれているのでしょうかね?
前半が普通に楽しめたぶん、余計に後半の失速が残念でした。
そもそも政府や軍隊などが全く登場せず、主人公の周囲しか描かれないのに、終盤になってからいきなり大ボスを退治するような大風呂敷をひろげてきたものだから、それもあって理解が追いつきませんでした。
異変がどのぐらいの範囲で起きているのかぐらいは示唆してくれれば良いのに。
あのアンテナが元凶ってことなら、やけにローカルな話でもありますね。
これならテレビシリーズで、もっとじっくりと深堀りしたほうが良かったと思います。

主人公たち以外の登場人物は割と使い捨てにされ、珍しく悪人らしい悪人が出てきません。
サミュエル・L・ジャクソンも比較的大人しい。
というかマトモ(苦笑)
相変わらず、セリフは人一倍多いですけれど。

全体的に、寒々しい色調の映像は好きでした。
これなら「28日後...」シリーズや「クレイジーズ」を観た方が無難な気がしますが、携帯電波ゾンビは割と怖かったです📱🧟‍♂️
一種の集団洗脳モノとして観ると面白いかもしれません。


NETFLIXにて