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リリーのすべてのniのレビュー・感想・評価

リリーのすべて(2015年製作の映画)
4.8
言うまでもないかもしれないが、本当に素晴らしい作品。
全体を通して、作中の色彩と絵画、デンマークやパリの街並みがとてもとても美しかった。

リリーを中心に話は進んでいくと言える。だけど、リリーと同じぐらい、妻ゲルダの存在がとても大きくて、彼女が主人公とも言えると思う。だから、ゲルダを演じたアリシアヴィキャンデルにはアカデミー賞「助演」女優賞じゃなくて「主演」女優賞を取って欲しかった(誰)

もし現代であっても、夫が急に女性として生活をしていきたい、と言ったとして、悩み、とまどいながらもそんな夫を受け入れ、支えられる妻はなかなかいないと思う。別に結婚していなくても、なんなら恋愛関係になかったとしても、友人から急に性別を変えたい と言われたら私だってどう思うか分からない。
まだ性別適合手術が行われたことのなかった当時、1928年にゲルダがリリーことアイナーのありのままの姿を葛藤を感じながらも受け入れたことは本当に立派で、ゲルダは偉大な人物であると思う。
そして、大きな大きな愛というものを感じた。恋愛感情と言われれば恐らくそうでも無いし、かといって友達として愛した訳では無いと思うし、唯一無二というのが正しいのだろうか…
このふたりの関係、結びつき、愛がどんなものであるか、言葉にして説明するのは非常に難しいことであると思う。名前の付けられない愛だが、それは本当に尊くて、強いものだった。個人的にこういったなんとも言えない関係、愛情を描いた作品が大好きなので、この作品もすごく好きだった。
もちろん愛だけではなく、ゲルダには大きな葛藤もあったのだと思うし、観ていてそれはひしひしと伝わってきた。アリシアヴィキャンデルの演技が本当に素晴らしかった。リリーに「アイナーに戻って」と言ったシーンがとても印象的だった。

今は、自分の生まれ持った生物学的な性別について違和感を覚え、性別を変えたいと願う人達のことを「トランスジェンダー」と表すが、もちろん当時にそんな言葉はなかったのだろう。そのため、アイナーがリリーになりたい、女性になりたいという思いを伝えることの困難さが伝わってきた。
と同時に、私はまだ全然トランスジェンダーというものが分かっていない、と突きつけられた。
性別を変えたいという気持ちってどんなものなのだろうか。ただ自分の生物学的性別とは違った振る舞い、装いをしたいと思うだけでなく、死ぬかもしれないというリスクを冒してまで(これは当時の話ですが)性別適合手術を受けるのには一体どういった意味があるのか。私にはよく分からなくて、理解するのが難しい複雑な事柄であることは間違いないと思うけど、知識不足に恥ずかしくなった…😔 段々と変わってゆく主人公を演じた、エディ・レッドメインは本当に素晴らしい!そしてとても美しかった。
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