ベニギツネ

リリーのすべてのベニギツネのレビュー・感想・評価

リリーのすべて(2015年製作の映画)
3.7
以前鑑賞したときに咀嚼できなくて、これはもう一度観る必要があると思った作品。
ストーリーと、役者の演技の尋常ではないエネルギーに圧倒された。
時代背景の描写も、画面全体にワントーン落としたような空気感が満ちていて美しい。
程度の差こそあれ、誰だって少なからず異性的な要素を秘めているものだと思う。それがほんの些細なことをきっかけに、堰を切ったように心の性が表面化し、男としての自分を消滅させたいとすら願うのは想像を絶するものがある。"男"を"女"で塗りつぶすかのようなエディの演技に狂気すら感じた。
我が身に置き換えるのが難しい設定なのに、重たく心に残るのは、妻・ゲルダを演じたアリシアの存在感によるところが大きいと思う。夫の中の女性を目覚めさせた自責の念もあったんだろうけど、愛情という言葉だけでは表現できない凄絶さがあった。史実はどうあれ、スゲェ女だ。
困ったことに、この作品を観て以来、エディ・レッドメインが同性として認識されない。どうしよう。