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リリーのすべてのmのレビュー・感想・評価

リリーのすべて(2015年製作の映画)
4.0
身体と心が必ずしも一致するわけではない。
なにを持って〔ありのまま〕といえるのか?

まず素直に驚いたのは、ウラが持っていた百合。
そこから簡単にリリーと名付けられただけなのに、アイナーはリリーという名に惹かれていく。
その背景には確実にアイナーの中に女性がいるということが理解出来る。
服を触る手がそれを物語っている。
名前なんて何でもいい。
ただ、心に忠実に女性でありたいという気持ちが感じられる。

エディ・レッドメインさんの演技力には脱帽した。
冒頭からなんとなく、ジェンダーレスな雰囲気を醸し出している。
アイナーとして寝ている姿でも、胸を手で覆っているのが凄く印象的だった。
リリーとしてからのエディはもう、完全に女性!
仕草や表情がぞっとするほど美しかった。
そして、ペニスを股に挟んだり、また女性を覗きながらペニスの存在に気づいて絶望する姿が切なかった。
アイナーとして、ゲルダに接する姿も、胸を締め付けられる。

アイナーの妻、ゲルダ。
彼女の姿も美しく、そして苦しさを感じた。
性別では語り切れない愛がそこにはあるけれど、でも夫アイナーを求める気持ちも交錯する。
アイナーと過ごした生活は偽りなのだろうか?
アイナーに会いたいと訴える姿が凄く辛かった。

芸術的な面で言えば、凄く凝っていて、何でもない風景でも美しかった。
映像がワンカットワンカット作り込まれていて、インテリアやドレス、構図すべてがパーフェクトだった。


ただ一点、演出が嫌。
脚色の強さ、綺麗な表面上だけの感じが強く思えてしまった。
監督が『レ・ミゼラブル』を作ったトム・フーパーさんらしくなんとなく理解出来た。
美しさだけが一人歩きしている気がする。
主演2人の演技が素晴らしいのだから、もっと引き算して欲しい。
ミュージカルの『レ・ミゼラブル』は演出多寡でもいいと思うけれど、今作は劇的を狙い過ぎている気がする。

それ以外はパーフェクト。
大切にしたい作品。

ストーリー : ★★★☆☆
映像 : ★★★★★
設定 : ★★★★☆
キャスト: ★★★★★
メッセージ性 : ★★★★☆
感情移入・共感 : ★★☆☆☆

cc/あなたの愛で、本当の自分になれた。
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