リリーのすべて(2015年製作の映画)

The Danish Girl

上映日:2016年03月18日

製作国:
  • アメリカ
  • / 上映時間:120分
    監督
    トム・フーパー
    脚本
    ルシンダ・コクソン
    キャスト
    エディ・レッドメイン
    アリシア・ヴィキャンデル
    アンバー・ハード
    マティアス・スーナールツ
    エイドリアン・シラー
    ベン・ウィショー
    セバスチャン・コッホ
    エメラルド・フェンネル
    あらすじ
    1928年、デンマーク。風景画家のアイナー・ヴェイナーは、肖像画家の妻ゲルダと共に公私とも充実した日々を送っていた。そんなある日、ゲルダに頼まれて女性モデルの代役を務めたことをきっかけに、アイナーは自分の内側に潜んでいた女性の存在に気づく。それ以来、“リリー”という名の女性として過ごす時間が増えていったアイナーは、心と身体が一致しない自分に困惑と苦悩を深めていく。一方のゲルダも、夫が夫でなくなっていく事態に戸惑うが、いつしかリリーこそがアイナーの本質なのだと理解するようになる。移住先のパリで問題解決の道を模索するふたり。やがてその前にひとりの婦人科医が現れる-。

    「リリーのすべて」に投稿された感想・評価

    このレビューはネタバレを含みます

    妻ゲルダの愛情の深さに、ほぼ最初から最後まで涙、涙。
    ゲルダはアイナー(リリー)が何を望んでも、結局すべて受け入れるんですよね。すごい、すごすぎる。

    夫がシャツの下に女性下着を着けてたところで、普通ならドン引きだと思うんですけど、戸惑いながらも、その戸惑いを悟られないように受け入れるゲルダ。
    二人とも画家だし、美に対する感性が鋭いからこそ、きれいなものを身に着けてみたい、という気持ちまでは理解できたのかもしれない。だとしてもこの時点でゲルダの愛の深さに唸った。

    アイナーはずっと心のなかに女性の自分を秘めていたのだろうけど、ストッキングを履いて、「リリー」という名を与えられたときに、心の奥底に閉ざしていた感情が吹き出してきたのだろう。
    リリーがどんどん女性らしくなり、自分らしく生きる喜びに溢れていくのに対し、ゲルダの愛したアイナーは失われていく。

    ゲルダは最初から最後まで、アイナー(リリー)の変化に敏感で、些細なことも決して見逃さない。どんな姿であっても、ゲルダは目をそらすことなく彼(彼女)を見つめ、愛し、描く。
    アイナーを失いたくないのにリリーを描き続けるのは、やっぱりその姿に本質の美しさを見出していたのかなと思った。

    旧友のハンス(マティアス・スーナールツ)がプーチンに似すぎてて、幾度となく「プ…プーチン…!」と脳が現実に戻るんだけど、そんなプーチン攻撃も乗り越える素晴らしい映画だった。
    ラストシーンのストールが飛ぶシーンも陳腐な演出に見えたけど、そこまでの積み重ねが良かったから「リリー、自由に飛び立つのよ!」と素直に思えた。

    エディ・レッドメインとアリシア・ヴィキャンデルの繊細な演技がすばらしい。献身的な愛について、考えさせられる映画だった。
    本当の自分を偽って生きるのは、辛いんだろうな。
    この映画のような葛藤を自分のこととして考えるのは難しいけれど、“なりたい自分になる”っていうのは大事だと改めて思った。

    それから、妻の愛。
    こちら側の方が感情移入。本当辛い。
    好きな人がいなくなっちゃうんだもんね。
    自分だったら支え続けられるのかな…?
    本当に強い女性で、憧れる。
    リリーは自分に誠実に生き、ゲルダの愛を裏切る。それでもゲルダはリリーを愛し続ける。その姿がじんわりと胸にしみて切ない。

    最後、リリーは望む人生を手に入れるけど、ゲルダには何も返ってこないじゃないですか。だけどそれで、彼女はいいと思ってるんですよね。アイナーとリリーを深く愛していたから。
    キャッチフレーズ「あなたの愛で本当の自分になれた」◀︎作品にぴったり。
    最近(意図せずして)性がテーマの映画を観ることが多かったけど、観ればみるほど難しい問題だなと思った。

    自分が体だけ男だったら。それは地獄だと思う。
    周りの女性たちは、自分がしたいことを当たり前のようにできて、でも自分の体はどう考えてもそれを受け入れるようにはできてなくて。
    (きっとバレリーナの衣装を大事そうに持ったアイナーは、既にリリーだったんだろうな。)

    逆に自分の愛する人が女になりたいと言ったら、そしてその愛する人はもう死んだと言われたら、私はその現実を受け入れられないと思う。

    ただ、「君は精神病だ」と言われ続けたアイナーが「君は正しい」と肯定してくれる医師に出会えて、自分自身が、自分の意思で、間違いを正すために手術を受けたのだから、ある種幸せなのかなとも思った。


    ゲルダは最後までリリーと一緒にいたけれど、愛していたのはリリーじゃなくてアイナーだったと思う。



    博士と彼女のセオリー同様、エディの演技力がすごい。
    男だということを忘れるほど綺麗だった。
    愛の形は人それぞれであることを再確認させてくれた作品。

    ‪リリーの危うい美しさ、ゲルダのひたむきさに心を打たれた。性別について悩むよりも、人間としてどうやって生きていくことが大切なのかを教えてくれた気がする。

    マイノリティの差別を問題視して作られる作品は多い。差別がどれだけ酷いことかを説いてくれる作品は多い。たとえ訴えたとしても、それで差別がなくなるとは限らない。でも、この作品は差別とかそんなことよりも、全く違うタイプの人間同士がどう絡んで生きていくかを説いてくれる。この作品における2人の生き方は、きっと、多様性を持つ我々の生き方の1つに過ぎないような気がする。


    沼は僕の中にある
    ‪これほどの愛は私に値しない‬

    たった2時間なのに、色んな感情が駆け巡った
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