あらなみ

ゴッホ 真実の手紙のあらなみのネタバレレビュー・内容・結末

ゴッホ 真実の手紙(2010年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

ゴッホとテオの書簡を中心に、手紙のやり取りベースで短すぎるゴッホの生涯を追っていった作品。

今や世界的に人気のゴッホの絵だが、生前は一枚しか売れず、弟のテオにおんぶに抱っこだったのはあまりにも有名。
耳を切り落とし、そこから精神病棟を転々とし、最終的には胸を拳銃で撃つも、自力で宿に帰り、二日後に死亡するという生涯は、なんとも筆舌に尽くしがたい。

手紙から見えて来るゴッホ像は、内向的で内省的、繊細で神経質だった。
何をしても中途半端で、生きるのが本当に不器用。
ただ一つ、打ち込めて、描かずにはいられなかった絵は、画商であり、ゴッホが手にできなかった職や家族を持っている弟のテオにしか理解されないのはあまりにも皮肉。
そのテオでさえも兄の絵の本当の価値を見出せたのか思わず疑問を持ってしまう。

多分、拳銃で胸を撃ったのも衝動的で死ぬつもりはなかったのかも知れない。本当に死ぬつもりならもっと確実に死ねるように口の中に銃口を入れるだろうし、ましてや自力で宿には帰らないだろう。
本当に、生きることが不器用だったのだと思う。
たった一つ、のめり込んだ絵も、仲間内にすら評価をされずこき下ろされ、それでも愛に飢えていた青年はあまりにも孤独で、彼の気持ちは、よくわかる気がした。

才能があるかはわからない。それでも描いたことのない人よりかはずっと上手く描けるはずの絵。けれど、世間には見向きもされない。
金にならないものを生み出し続ける孤独は想像に絶する。
彼の生涯は短かったけれど、燃え尽きる前の星が一層光を強くするように、彼の人生は強く凝縮されたものだったのかもしれない。

兄の後を追うようにテオが亡くなることになぜ? と思って調べたら、元々病弱だったことに加え、兄の死をきっかけに衰弱したのね……。
あらなみ

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