イチロヲ

歌麿 夢と知りせばのイチロヲのレビュー・感想・評価

歌麿 夢と知りせば(1977年製作の映画)
4.5
美人画の創作に腐心する浮世絵師(岸田森)が、混沌極まる江戸文化に官能性を求めていく。喜多川歌麿の伝記を大胆に脚色している、エロティック時代劇。

プログラム・ピクチャーで採用されているモチーフを、2時間超の本編内にパッケージ化しているような作品。芥川龍之介・著「地獄変」の系譜を根底にしながら、歌麿の特殊極まりない職人脳を多方向から描写している。

実相寺昭雄の仕事が細部まで行き届いており、全カットがフォトジェニックに仕上がっている。だが、大仰な効果音とシンセサウンドが乗っているため、生活音、自然音の再現は乏しい。

女優陣では、底辺部を生き抜いている夜鷹(緑魔子)が印象鮮烈であり、寛政の改革(奢侈禁止令)へと雪崩込んでいくドラマ展開に胸騒ぎを覚えることができる。考えすぎかも知れないが、ロマンポルノ裁判の影響下を推察することも可能。
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