Mikiyoshi1986

軽蔑のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

軽蔑(1963年製作の映画)
4.3
9月28日は20世紀のフランスを象徴する"セックス・シンボル"女優ブリジット・バルドー83歳のお誕生日です。
おめでとうございます!

当時人気絶頂のバルドーが時代の寵児ゴダールと初タッグを組み、ヌーヴェルヴァーグに新たな"愛"のテーマを投げ掛けた傑作「軽蔑」

本作で魅せるBB様のプリケツは、今なお映画史に燦然と輝くオールタイムベスト第一位に君臨しております。

アメリカ資本・イタリア製作で巨匠フリッツ・ラング監督の「オデュッセイア」を制作中、
あまりにも文芸的過ぎる内容に難色を示した米人プロデューサーは「もっとエロい要素とかガンガン盛り込んで俗っぽい映画にしてくれよ!グヘヘッ」と劇作家ポールに脚本の参加を依頼します。
それを起点に歪みが生じ始めるポールと妻カミーユとの愛。

本作はアメリカ映画産業がヨーロッパの伝統的シネマを脅かしつつある現状を危惧しながら、
ゴダールと当時の妻アンナ・カリーナの行き詰まった結婚生活を色濃く反映させた自伝的作品となっています。

監督と女優の夫婦関係は劇作家とタイピストに変換され、
劇中では前作「女と男のいる舗道」のアンナの髪型を彷彿させるカツラをバルドーに被らせるなど、あからさま。

そして本作ではシアターから5人が出てくるシーンがありますが、そこで上映されていたタイトルは「VIAGGIO IN ITALIA」
そう、ロッセリーニ監督が妻イングリッド・バーグマンとの行き詰まった結婚生活を彼女主演で赤裸々に綴った名作「イタリア旅行」であり、
ゴダールの「軽蔑」は彼らへの熱烈なオマージュでもあるのです。

また本作ではギリシャ神話「オデュッセイア」のユリシーズ=主人公ポール=監督ゴダールという構図により、
「畜生…俺は甲斐性なしだぜ…しかも妻に寛容すぎたが故に怒らせ軽蔑されちまった…勝手にしやがれ…」というカッコつけた"男側の"自己分析をここで吐露しています。

しかし「イタリア旅行」みたくゴダールの妻アンナを起用せずに、しかも人気絶頂の美女BB様をヒロインに迎えたことは皮肉にも本作の「男は女心を分かってない」を助長させ(更にはガンガンBBを裸にさせてるし)、
アンナをより幻滅(軽蔑)させた一端になったとも云えます。
ここからアンナのための映画が少しずつ減っていくのも顕著なのですが、
最後は未練たらしく怒濤のアンナ主演攻めを展開するもゴダールさん時すでに遅し…ドンマイ。
"永遠"を象徴する地中海の水平線が実に物悲しいっす…。

ただバルドーの魅力は確実にアンナのそれとは畑が違い、その圧倒的な艶かしさが本作を一層ドラマチックな名作に仕立て上げているのもまた事実なのです。

フリッツ・ラング監督のプロとしての矜持もしっかりフォーカスされ、
ポールの決意表明は本作以降、徐々に自身の作風を突き詰めてゆくゴダールを暗示しているかのよう。
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