安琦

光をくれた人の安琦のレビュー・感想・評価

光をくれた人(2016年製作の映画)
3.5
ブルーバレンタインでやられたばかりだったのに…デレク監督作品。
灯台は「二つの大海を照らす光(原題)」。灯台が孤独な船を導くように、誰かの存在が別の誰かの灯台となる、赦しの物語。
厳しい自然(ライアンの娘を確かに彷彿とさせる)の中に凛と立つ灯台の美しく、力強く、そして圧倒的に美しいさまが印象的だった。

ちょっと灯台守にしては優男(足も長すぎるし、腰も細すぎるし、笑)のファスペンダーの終始暗い影のある瞳がいい。最初に映った彼の瞳がこの後のいろいろを暗示させるような。それに対してまっすぐに思いのまま生きる、そしてそれが正しいと信じて疑わないイザベルの強さともろさをヴィキャンデルが熱演。いつものことだが、近頃の「突っ走る激情」みたいなのを演じさせたらうまい。そして何より脇役に徹したレイチェルの抑えた演技が素晴らしかった。彼女の哀しみ、苛つき、怒り、やるせなさ、どれも一番人間ぽくて、彼女が最初に出した条件(誰も幸せになれないと本人が一番よくわかってるのに)のシーンが本当にどうしようもなく辛かった。
だが、前回のライオン同様、人が泣く(とにかく会場中からすすり泣きが聞こえてきていた)ところでは全く泣けなかったのは、お話が美しいメロドラマになりすぎていたせいだろう。

ところで無口な口下手男が綴る手紙の威力がハンパない。これは…恋に落ちるよ!
安琦

安琦