emily

光をくれた人のemilyのレビュー・感想・評価

光をくれた人(2016年製作の映画)
4.0
 時は第一次世界大戦後のオーストラリアの孤島ヤヌス・ロック。帰還兵のトムは灯台守として赴任する。閉ざしてた心をとかしてくれ恋に落ちたトムは妻イザベルと幸せな日々を過ごし始めるが、2度子供を失ってしまい喪失感の中、ボートが島にたどり着く。そこには男の死体と赤ちゃんが乗っており・・

 壮大な自然に囲まれた絶品のロケーション、風の音、波の音、そうして海へ昇り沈んでいく太陽。夕日をバックに二人の瑞々しく幸せな日々は煌びやかで美しい。そこから物語は流産と死産により喪失感に明け暮れる妻とそれを見守る夫の姿を淡々と描写する。悲しみの中でも夕日は平等に美しく、心を平穏をもたらしてくれる。しかしそんな折念願だった赤ちゃんが向こうから思わぬ形でやってきてくれたのだ。目先の幸せを掴む事しか見えない。それはまるで運命という名の必然のように、二人は罪を犯すのだ。幸せな日々の一方で喪失感に嘆いている人が居る。事件により人間の醜い部分が浮き彫りになっていくようで、本作の覆っているのは壮大な愛である。妻と子供の産みの母親の葛藤。それぞれの行動や言葉の節々から言葉にならない愛がこぼれており、それは赦しに繋がっていくのだ。

 結婚したときは夫が居るそれだけで幸せだった。お互いの光だった。しかし人は次なる欲望を満たそうとする。それが満たされないと嘆き悲しみ、初心を忘れてしまうのだ。出会って恋に落ちたその時から妻にとっての光は夫だったはずだ。子供を失い、罪を犯した事で改めて大切な物に気が付く夫婦。そこに宿る確かな愛は年齢を重ねてしっかりと回収されていくラストがすべてを物語っている。子供と過ごしたわずかな時間は彼女の名前と脳裏でしっかり生き続けているのだ。それぞれの思いが交差し、相手の気持ちが常に見えてくる。それは海よりも大きな愛で、光である。
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