賽の河原

光をくれた人の賽の河原のレビュー・感想・評価

光をくれた人(2016年製作の映画)
3.7
光をくれた人って邦訳、すげーいいっすね。
ヤヌス島という絶海の孤島の灯台守として赴任した男とその男と結婚した女、二度の流産を経て島に流れ着いた子どもを...というお話ですけれども。
まずはヤヌス島、島の名前も非常に示唆的であり最高なんだけどやっぱりロケーションが凄いですよね。映画館のスクリーンでドカーンと観るとやっぱり絶海の孤島としての迫力や説得力がある。二度の流産における主人公夫婦の追い込みがテンポよく、かつ容赦ないので「お前ら学習しねえな、子ども産むっていう行為ナメてんのか」っていうツッコミが私は入れられなかったですね。
あとはヤヌス島に赴任する男が汽車に乗って来るシーン、周りの人間とか主人公観てると誰がどう観たってこと、男の背負ったカルマとか第一次大戦の酷さとか伝わってきますわ。
んでこの夫婦、まあ一般的に言えば許されざる罪を追うんだけれども、「この子を育ててどうなってしまうんだろう」というサスペンスはもちろん、カルマを背負った男と女、いわば原罪と贖罪を巡る実にキリスト教的なお話にもなっていてそういうモチーフを見て行くのも面白い。2度目の流産の子の墓をアレするシーンとかさ、もう決定的な範を越えた感が半端ないじゃないですか。
邦題の秀逸さにより、イエス的なものを観客はスクリーンに見出さざるを得ないし、その赦しが波及していく様が本当に「光をくれた人」というタイトルに相応しい。
また「そして父になる」ではないけれども子どもを巡る家族のお話とも読めるし、1度目の流産の後の夫婦の姿はさながらブルーバレンタイン。周りの夫婦でも結構流産を経験するカップルっているけど、それに対しての温度差はジェンダーの問題もあるんだろうけど溝になったりするよねっていう普遍的なお話にもなってる。
重厚なお話でポリフォニックなんだけど、テンポはいいしあっという間に終わる。今年五本の指に入るんじゃないかっていう濃厚な映画体験でした。
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