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ライアの祈りのakrutmのレビュー・感想・評価

ライアの祈り(2015年製作の映画)
3.6
八戸を舞台に、離婚によって心に傷を追った女性と縄文時代を専門とする考古学者の男性の恋愛関係を描いた、黒川浩行監督のドラマ映画。原作は森沢明夫の青森三部作の最終作となる同名小説。

映画として面白いかというと、起伏に乏しいストーリーもあってそれほど面白いとは言えないが、何も考えずにぼーっと見るにはちょうど良い感じのゆるさの作品だろう。個人的には、そのゆるさにけっこうハマった。内容とは関係ないが、八戸の観光案内のような役割も果たしていて、縄文時代の遺跡である是川遺跡や是川縄文館をはじめ、中心街にあるレトロな雰囲気が漂う横丁など、なかなか魅力的なところも良かった。学生時代に東北を旅したとき以来、青森を訪れていない(そのときも青森、弘前、十和田などで、八戸には行っていない)ので、時間がゆっくり取れるような身分になったら行ってみたい。

埴輪(縄文時代よりはずっと後だが)のようなおかっぱヘアーの主人公・桃子を演じた鈴木杏樹の終始暗い雰囲気を漂わせている演技が、意外に良かった。相手役となる熊五郎を演じた宇梶剛士のハイテンションさは、最初は気になったが、鈴木杏樹のどんよりとした暗さをちょうど打ち消すような効果があって、調和が取れていた。本映画での宇梶剛士の風貌やしゃべり方によく似た知り合いがいるので、熊五郎が出てくるたびに笑ってしまった。職場での桃子の後輩を演じている武田梨奈が、脈絡もなく唐突に空手の型を披露するシーンも笑えた。

世間では、5年くらい前から密かな縄文ブームらしい。縄文時代の生活=スローライフかどうかはよくわからないが、この時代にあってプリミティブなものへの郷愁・憧れはわからないでもない。
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