岩井俊二作品に興味があり、鑑賞。
[あらすじ]
タウンワークのプロモーションも兼ねて制作されたオムニバス短編アニメーション。懸命に仕事をする3人の若い男女を描く。(約6分×全3部構成)
[感想]
この1年後に作られる『花とアリス殺人事件』の習作になったとも言えるロトスコープアニメ。
岩井俊二が企画・脚本を担当した2009年の『BATON』。
この時点では、かなり不気味さが際立ってしまった映像手法が、5年の時を経て、格段に向上していた。
また、その裏には、前年に放送されたTVアニメ『惡の華』の影響があるとも考えられる。
前作『BATON』では、海外スタジオにお願いしていたアニメーション化*作業を、本作では、ほとんどを日本人スタッフにお願いしており、アニメ化が難しい日本人の顔・表情を見事に再現していた。
また、前作と比べ、水彩画タッチになった風景も印象的。
前回はアクションメインの作品だったこともあり、CGチックに描かれていた背景が、今作では、ありふれた日常を強調するような優しいタッチに変わっていたのが、とても良かった。
[各話の雑感]
第一話「初めての潮の香り」
海辺のガソリンスタンドでアルバイトを始めた女性の一コマ。
一人暮らしを始めながらも、どこか、故郷のことを思い出す主人公。
なんてことのない物語でも愛おしく感じてしまうのは、やはり、その映像美の魅力なのか。
水彩絵の具を滲ませたような、ぼかしたような背景が美しく、気持ちが落ち着く短編だった。
参考URL:https://youtu.be/nT3wcvSEscM
第二話「君の夢を読む」
コンビニバイトで意気投合する男女の話。
顔見知りからバイト仲間へと変化する日常、バイト中とプライベートの距離感の違い、そのどれもが愛おしかった。
絶妙なリアリティを保ちつつ、どこか、恋の始まりを予感させる、ロマンティックな結末が心地よい。
参考URL:https://youtu.be/ucGbBTxxN-g
第三話「この遠い道程のため」
ビールの売り子バイトをする男女、2人のささやかで幸せな一日。
後輩へのありふれた優しさや、バイト仲間へのささやかなサプライズ。
淡々と描かれる穏やかで幸福感溢れる日常に、心が洗われる一作だった。
参考URL:https://youtu.be/Irvq7wRs1mU