茜

愛を複製する女の茜のレビュー・感想・評価

愛を複製する女(2010年製作の映画)
4.1
余りにも捻りのない邦題と世界観にそぐわないジャケ写に辟易しますが、題材も世界観も独特な雰囲気を持った映画なので、それ故に合う合わないがきっぱり分かれそう。

台詞が極端に少なく、BGMもなく、話の流れが淡々としていて抑揚がないので退屈に感じるという意見もよく理解出来る反面、私は割と好きなタイプの作品。
とにかくこの映画、撮り方がとても綺麗で、全てのカットが絵画みたいに美しいので、実は凄く綿密に計算された構図で撮られているのではと思った。
起伏を感じさせず、静かに淡々と進行していくストーリーだからこそ、余計にこの綺麗な構図が映えて見えるような気がする。
あとストーリー展開同様に登場人物達もあまり感情を表に出さないので、特に主人公の内に秘めた愛情を台詞以外の演技で表現しきっていたエヴァ・グリーンに感服したし、ますます好きになった。

「死んだ恋人のクローンを産んで育てる」という題材は狂気的ではあるものの、ジャケットに書かれているようなSFスリラー!的に張り切った要素は感じられなくて、結局これも切ない純愛の形のひとつなのではと思った。
主人公にとってもクローン側にとっても、これが幸せな形だとは決して思えないし、死も運命なので抗うべきではないと思う。
それでも不思議とこの主人公に嫌悪感みたいなものを感じなかったのは、複製する側とされる側、両方の感情がとても上手く表現されていて斬新な切り口の映画だと感じられたからかも。

息子は歳を重ねて成人になるのに、全く見た目が老けないエヴァ・グリーンに違和感を感じつつも、シンプルな演出で複雑な心情を巧みに表現した良作。
茜