TAKU

ローリングのTAKUのレビュー・感想・評価

ローリング(2015年製作の映画)
5.0
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大傑作!!。2015年に観た日本映画の中で一番好き。

女子更衣室を盗撮したことで、水戸を追われた体育教師が地元に帰ってきた。彼の盗撮映像の中にある人物が映っていたことから、盗撮映像を巡り水戸の人間たちの欲望が交錯する。

いや~本当に最高な映画だな。何が最高って『Killer Joe(キラースナイパー)』みたいな、地方を舞台にトラッシュ(日本だとDQN)たちがしょうもない欲望のためにしょうもない争いをするド田舎ノワールムービーが、日本映画でも作られたからだ。

主人公の一人であり、語り部でもある川瀬陽太演じる元教師権藤は、盗撮したことを反省していない所か教え子から金をせびり、柳英里紗演じる彼女みはりのヒモ状態。彼のクズっぷりも凄まじいが、この映画の登場人物のほとんどが自分のことしか考えてないクズばかりだ。登場人物の中でも一番常識人な三浦貴大演じる貫一は、自分の先生だった権藤の彼女を寝取り、他の教え子たちは盗撮映像を使って金儲けを企む。観ながら「類は友を呼ぶ」とはこういう時に使うのだなと思った。

本作は全編にわたり川瀬陽太演じる権藤のナレーションで説明されていくが、 オープニングは奇妙なシーンから始まる。ヒナの巣がどアップで映し出され、「これが現在の私です」というナレーションが被さる。そして、なぜこうなったのかが語られている。Filmarksで出来事や感情をナレーションですべて語る手法が良くないという意見を見たが、僕は全然アリな語り口だと思う。この映画はある犯罪行為によって転落していくフィルムノワール的な要素があり、フィルムノワールの名作であるビリーワイルダーの『サンセット大通り』や『深夜の告白』も主人公のナレーションによって物語が進行していくので、ジャンルの系譜を踏まえた表現だと思う。そして、観客はラストで一風変わったオープニング、タイトルの『ローリング』が持つ皮肉な意味を知ることとなる。

インディーズ体制で制作された映画なため、水戸市協力の下、水戸市オールロケで撮影された。しかし、これを読んでいる人ならお分かりの通り、登場人物がどいつもこいつもクズばっかなので、水戸市が『孤高の遠吠』における富士宮市のような荒廃した都市ようにしか見えない。
映画評論家の柳下毅一郎氏がダメな日本映画を評論する「皆殺し映画通信」なんか見ていると、数多くの自主映画が自治体協賛のご当地映画として作られており、しかもそういった映画は市町村のPRを優先した結果、出来が非常に悪いというのを目にする (ある村がご当地映画を製作したら、村が破産してしまったドキュメンタリー映画もあるほど深刻な問題)。
それを考えると、地域のPR度外視で完成度だけを高めた監督とプロデューサーたちの姿勢には讃辞を送りたくなる。

また、本作が凄いのは電動ドリルが良い使われ方をしていることだ。前々から、劇中で電動ドリルが魅力的に使われている映画に駄作はないと自負している。『ドリラーキラー』に『ボディ・ダブル』、『愛・アマチュア』も然り。同じく2015年に公開された『アメリカン・スナイパー』でもとてもおぞましい使われ方をしていた。
本作では、電動ドリルで人が殺されるというような場面は出てこないが、終盤のある場面はドリルを活かした緊張感あり、笑いありの名シーンだ。

主演の三浦貴大や川瀬陽太をはじめ、キャストの方々の演技がみんな上手い中、柳英里紗はずば抜けて素晴らしかった。彼女が演じる権藤の彼女みはりは、貫一や権藤を翻弄するファムファタール的な存在だ。だが、フィルムノワールの古典とされている映画におけるファムファタールが自分から男たちを転落させる悪女なのに対し、みはりはクズばかり登場する本作の中で最も無垢な人物だ。貫一も権藤も、彼女を欲するが故に自ら破滅していく。彼女のちょっととぼけた感じの演技がキャラクターとマッチしていて絶妙だ。また、彼女の脱ぎっぷりも良い。三浦貴大とのセックスシーンにおけるエロエロしい肉感が堪らないのだ。女優を志そうという人は彼女の名演をしかと目撃してほしい。

事程左様に、こんなエンターテインメントらしい要素をふんだんに盛り込みながらも、インディペンデント映画らしいオリジナリティと自由さに溢れた映画が観れるなんて、日本映画もまだまだ捨てたもんじゃない。

1月8日にレンタルされるらしいので是非とも観て欲しい。観て損はしないはずだからさ。