えくそしす島

セバスチャン・サルガド 地球へのラブレターのえくそしす島のレビュー・感想・評価

3.7
【神の眼】

写真家、と言っても撮影対象は様々だ。
戦場や報道、風景や自然、人災や災害、人物や動物、ファッションや美術など。
その中でもモノクロームをベースとし、内戦や難民、飢餓や負の事象、過酷な労働や肖像写真(ポートレート)、それらの報道写真から大自然が齎す恵みへと被写体を転向した著名な写真家がいる。

「セバスチャン・サルガド」

監督:ヴィム・ヴェンダース、ジュリアーノ・リベイロ・サルガド

これは、映画冒頭の引用。
ギリシャ語で“フォト“は「光」
“グラフィン“は「書く」「描く」

なるほど、フォトグラファー(写真家)=光で描く人か。

今作の起点にもなった、ヴェンダースが心を奪われた写真がある。盲目のトゥアレグ族の女性を写した一枚の肖像写真。

通称“青の民族”と呼ばれ、色彩豊かなトゥアレグ族。青は恐らく男性だけだが、女性も色とりどり綺麗な衣装を身に纏っている。TBSのクレイジージャーニーで人気を博した、写真家ヨシダナギも同番組で訪れているので知っている人も多いかと。
だが、サルガドの写真は“モノクロ“だ。それならば何に心を奪われたのか。

「自分のカラー写真を見たとき、私は写真のなかの人の個性や尊厳よりも色に興味を惹かれてしまいました。」

実際に写真群を見ると、サルガド本人の言葉が腑に落ちる。色でしか表現できない世界があるように、モノクロでしか表現出来ない世界がある。黒と白とグレーから浮かび上がる被写体の本質。モノクロだけが持つ極まった陰影と存在感。

「地球へのラブレター」というゾワゾワする副題が付けられているが、遺体や衝撃的な写真も多いので注意。そもそもの原題は“地の塩"だ。

悲劇的で悲壮感溢れる報道写真を撮り続けてきたサルガドが、なぜ被写体を変えたのか。その遍歴を写真と共に辿るドキュメンタリー。

作中で展開される写真の数々には、只々、圧倒され飲み込まれる。但し
一部ではあるが、ものっ凄い欠点がある。その、じーっくり見たい写真にサルガドのご尊顔がオーバーラップしてよく見えない事がある。

サルガドどいて
(キングスマン:GCでジュリアン・ムーアがエルトン・ジョンに言った同じトーンで)