ヤッスン

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリーのヤッスンのネタバレレビュー・内容・結末

4.4

このレビューはネタバレを含みます

にわかではあるものの、スターウォーズファンとしては感謝をしたい傑作。
紛れもなく『新たなる希望』へのバトンであり、密接につながった物語のラストは号泣して声が出かけた。
物語も映像も、スピンオフだからこそできるひと味違ったアプローチに溢れ、『スターウォーズ』であることも忘れていない。「もう一つのスターウォーズ」として非常に感動的だ。

主人公ジンは帝国の支配が広がる宇宙で1人で生き抜いてきた。帝国から脱走してきた者、反乱軍のため手を汚してきた者、フォースを盲信するもの、様々な「ならず者」と出会い、大義のために闘うのだ。シンプルながら非常に熱く巧みな構成も光る。
出会ってすぐではもちろん結束しない。文字通り「バラバラ」で行動し、ジンにとって最愛であった父を亡くしてしまう。父親変わりとなる人物の死から大きく物語が動くシリーズのツボにも近い(近いのであってそのものとは少しズレているのが上手い)。
絶望的な状況下でさらにデス・スターが完成し、反乱軍は降伏を決める。そこで立ち上がるのが改めて大義のために結束した「ならず者」たちなのだ。
ドニーさんやK2といったキャラクターも鑑賞前の印象よりずっと魅力的で、見せ場も完璧。チームものとしてのツボも上手い。

そんな「ならず者」たちは、フォースは操れない。これまでメインで描かれていたジェダイたちの闘いではない、作品の中でも戦争の中でも「名も無き戦士」のから見た『スターウォーズ』なのだ。
そんな彼らから見た帝国軍、デス・スター、戦闘機、そして希望の物語なのだ。終盤の戦闘シーン、こちらは見慣れているAT-ACT(少し違うが)やスターデストロイヤー。彼らが見上げるそれや、突然ワープしてやってくるそれは絶望的だ。ゴジラを撮ったギャレス監督ならではの迫力だ。
その映像もまた見事で、模型なのかCGなのか判断しにくい、絶妙な質感で描かれている。そんな戦闘機がCGでなければ撮れない気持ちの良いカメラワークやアングルで飛び回ったり、闘い、佇む。まるでエピソード3と4の間であることを映像でも表現するかのようでありながら、間違いなく最新の技術で描かれているのだ。

この物語は最新に書いたように『新たなる希望』へのバトン。ローグ・ワンの闘いは本編では描かれなかった。しかしそんな彼らは「希望」のため、闘い、それを信じて散っていった。そのすぐあとに現れる『新たなる希望』を思うと涙が止まらない。
『シスの復讐』からこの初勝利に繋がるまで、途方もない戦いと死が繋がって来たのだろう。
ダースベイダーのラストの戦い、暗闇からライトセーバーと共に現れ、フォースを駆使し(あれだけ本編で信じられたフォースがここにきてこう使われる点も上手い)、圧倒的恐怖として進む。そんな中設計図のデータをまるでリレーのように渡していく。ベイダー卿のアクションも凄まじかったが、このリレーがまさに反乱軍のこれまでの戦いを体現しているようでまた涙が溢れた。必死に希望を求めて闘った「名も無き」彼らの前に、「希望」が舞い降りるのは、あと少しなのだ。

この作品はスピンオフ。物語も映像もメインの作品とはひと味違う。名も無きならず者たちの「もう一つのスターウォーズ」であるのだ。
ファンでない、作品を観ていない人にはお勧めしづらいが、非常に素晴らしい作品であった。
段々冷静になれるが、クライマックスの盛り上がりは尋常ではなかった。
ありがとう、ギャレス監督。
ヤッスン

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