えんさん

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリーのえんさんのレビュー・感想・評価

5.0
IMAX3D字幕版、通常3D字幕版、通常2D日本語吹替え版で鑑賞しました。

拡大していく帝国軍の勢いをつけるような最終兵器”デス・スター”の完成が間近に迫っていた。帝国軍との戦いに明け暮れ、囚われの身となっていた女戦士ジン・アーソ。彼女の父親は、その”デス・スター”の設計に関わっていた技術士官であったが、妻と娘との平穏な生活を奪われ、帝国の野望を打ち砕くべく、協力をしながらも密かにある弱点を仕込んでいた。反乱軍に救出されたジンは、失ったと思った父親の存在と”デス・スター”を打ち砕くべく僅かな希望を求めて、戦いに挑んでいくのだった。。「スター・ウォーズ」シリーズの新たな世界を映し出す“もうひとつ”の物語。「エピソード4」でレイア姫がR2-D2に託した帝国軍の宇宙要塞デス・スターの設計図が、いかにして反乱軍の手にもたらされたのかを描いていきます。監督は「GODZILLA ゴジラ(2014)」のギャレス・エドワーズ。

2015年公開の「スター・ウォーズ フォースの覚醒」時に、感想文の中で、僕の中での”スター・ウォーズ”感について触れましたが、僕にとって、「スター・ウォーズ」という映画はやはり特別。そういう想いを抱える人は、やはり多いんじゃないかと思っています。その意味で昨年の「フォースの覚醒」は確かに嬉しかったものの、どこかEP4〜EP6までのシリーズの最終幕と、新シリーズの立ち上げのみに苦心していて、物語として突き抜ける感が不足していたように思います。その中で公開されるのが新生ルーカス・フィルム&ディズニーの発表された、EP6以降のストーリー(「フォースの覚醒」はEP7)を1年おきに公開の中に入っていくスピンオフ作品。その第1弾は、シリーズとしても区切りとなっている、EP3とEP4との間に挟まる物語。EP4の冒頭に掲げられるクレジット文中に示される反乱軍が勝利を勝ち取り、同時にEP4の終盤に多くの犠牲者を出しながらも勝ち取ったといわれる”デス・スター”設計図に関わる物語となっています。

EP7が新シリーズとなるために非常に難しい立ち位置だったのに対し、本作はもう既にあるエピソードに絡む物語なので、舞台背景もしっかりしているし、何といっても人気キャラクターであるダース・ベイダーが存在していることが大きな強みであると思います。物語としても、EP4で語られるように多くの命が落とされたというように、後半はほぼ戦争映画としての描写になっていることが暗い影となる部分ではあるのですが、それでも肉厚に感じるのはEP4の副題でもある「新たなる希望」に通じていく要素がふんだんにあるからでしょう。僕の好きな「ロード・オブ・ザ・リング」とかでもそうなのですが、無駄と思える戦いであっても、”希望”という戦いの意義が消えない限り、戦うことには美しさが存在する。戦争映画では一番悲しいのは戦う意義すら見いだせず、無駄に命を落とすだけのお話。本作はそんなことには陥らず、一人一人の兵士に至るまで戦うことに殉じていく明確な意思が存在しているのです。反乱軍にとっては、勝ちとも、負けとも取れるような悲しきお話ではあるのですが、この物語の明確な方向づけが観ている者の胸を大きく揺さぶるのです。

それともう1つは、監督を務めるギャレス・エドワーズの熱烈なまでの”スター・ウォーズ”オタクっぷりでしょう。EP3までのクローン大戦後から、EP4へとブリッジしていく中で、細部に至るまで物語の設計が緻密なのです。映像としても、嬉しかったのがEP4に出てくるレッド中隊、ゴールド中隊の映像を一部うまく流用して使っていること。EP4ではデス・スターへの侵入がなぜあれだけ少数精鋭だったのか疑問だったのですが、本作のスカリフ攻撃でこれだけの被害が出たのだったら納得(映画的には、単純に製作費の問題だったかもしれないですが笑)できるとことです。それに一番驚いたのがターキン総督演じるピーター・カッシングが出てきたこと。彼はEP4でターキンを演じましたが、その後、1994年に亡くなっているのです。そう、本作ではアテレコの俳優が演じながら、その俳優に被せるような形でCGを駆使して、彼を蘇らせているのです。終盤で出てくる若きレイア姫についても同じような手法で再現。今までCGとしてのキャラクターを実写の人間と共演させる作品や、亡くなった俳優の生前の映像を再構成して使用する作品はありましたが、こうしたCGを使って、新しい演技をつけていくという試みは初めてのような気がします。もう、これだと俳優の生死や老若を問わず、一番いい時の映像で、本人と意図しない演技をさせるということにもなっていく。人工知能などを使えば、そのうちアドリブもしだすんじゃないか、、、と想像すると、すごく意欲的な挑戦をしている作品とも位置づけられると思います。

スカリフでの死闘の後の、ラスト10分間は本当に秀逸の一言。前半部は、物語の背景を台詞だけで説明しようとする強引な部分も感じられなくはないので、字幕版で感動した方は、是非日本語吹替え版で見ると違う印象を持つことができると思います。K-2SOも日本語吹替えで見ると、彼のキュートな一面も感じられたりします。いずれにしろ、本シリーズを凌駕するようなパワフルな作品になっていると思います。