晴れない空の降らない雨

ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリーの晴れない空の降らない雨のレビュー・感想・評価

3.8
 なんかスター・ウォーズで初めて感動させられた気がする。『ディープ・インパクト』懐かしいねぇ……。
 
 過去作品へのオマージュについても、「ファンへの接待」なんて揶揄もされたSW7のサービス過剰感はなく、それでいてキッチリと補完している。宇宙船のミニチュア感とか良かったし、6作目のオマージュと思しき宇宙・地上・屋内での同時進行も展開上自然で、「ためにする」感じはまったく抱かない。超横長のスクリーンに映し出された、宇宙での敵味方入り乱れる空中戦は迫力満点で、自由自在なカメラワークも楽しかった。スター・デストロイヤーを玉突きさせて状況を突破する展開が熱い。
 
 「前半はつまらなくて寝てた」という意見を見かける。確かに、ホログラムでメッセージ伝えた親父にそのまま会いに行く流れはまどろっこしい。舞台の惑星も暗く、場面自体が少なくて魅力がない。なので、この部分に関しては同意するけど、ほかの部分は全然そうは思わなかった。近未来アジアや中東のスークっぽい雑踏はワクワクするし、星から星へと移動するから画面的に飽きない。ストームトルーパー相手のドニー・イェン無双はSWにとって斬新だった。元々の東洋かぶれなコンセプトを考えれば、元々こういうアクションが登場していてもおかしくなかっただろう。
 
 ここで面白いのが、帝国のイメージが旧作のナチスドイツから明らかに現代アメリカに転換していること。すでにうろ覚えだが、ジェダの聖都のレジスタンスは明らかにイスラム教徒のテロリストを念頭に置いている。もともとは単なる趣味で非欧米圏の文化を正義側で用いたことが、こんな風に微妙に活きてくるのが面白い。
 
 神話の裏側というか名もなき人びとの物語という本作のコンセプトにも合致している。というより、このコンセプトに合わせて、主役たちを「ならず者どもrogues」とし、そこに現代的な要素としてテロリストを重ねて、そこから帝国がUSっぽい立ち位置になった感じかな。そういや「ならず者国家」なんて言葉もあった。
 
 それにしても、ディエゴ・ルナの「俺たちは同盟軍のためにスパイや破壊工作や暗殺などをやってきたんだ」というセリフ、序盤の情報屋(?)を容赦なく殺すシーン思い返すとしみじみ来るね。
 
 ちなみにベイダー卿のコスチュームは4~6で変化しているのだが、本作はちゃんと4と同じものに見えた(胸のボタンが緑と赤)。