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ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリーのwhiskeyのレビュー・感想・評価

3.5
思ったより遥かに異色作。

「ローグワン」とは「ならず者集団」といった意味らしく、この映画自体がスターウォーズシリーズの異端であることを宣言しているのだろう。スターウォーズの舞台設定を使いつつ、まるで正反対の世界観の映画。というより、スターウォーズが描いてきたあらゆることの真逆を、アンチテーゼとして意図的にすべて盛り込んだような作品だ。

もともとスターウォーズシリーズ、特に旧作の456は「ウォーズ(戦争)」とか言いながら、ものすごく呑気な物語だ(笑) ルークがハンソロに出会うことになる酒場で、宇宙人たちの混成バンドが楽しそうに演奏してるシーンが印象的。異形の宇宙人たちはコミカルでどこか愛らしく、みんな仲良しという感じ。

銀河の政治体制は共和国から帝国になり、アナキンがダースベイダーになり、デススターも完成しているというのに、どの星にも緊迫の気配がない。ハンソロの悩みは帝国の圧政よりも借金トラブルだ。それでも最後はフォースが救ってくれるというお気楽さ。ストーリーの子どもっぽさは昔から指摘されていたことだ。

でも、もし本当に帝国が文字通りの銀河独裁を容赦なく断行したらどうなるのか。ダースベイダーが本気を出したら誰がどんな風に惨殺されるのか。ナメクジみたいな異星人がどんな拷問をするのか。庶民への弾圧、反乱軍の粛清はどれほど凄惨なものになるか。そこを映画化したのが本作なのだと思う。

はっきり言って本作のドロイドは不気味だし、異星人は気持ち悪い。全然楽しくないしワクワクしない。戦争映画なのだから当たり前だ。この辺りの容赦ない感は「ランボー 最後の戦場」に似ている。

スターウォーズの正史を成り立たせるために、その裏側で消えていく運命にあるのが、ローグワンを名乗るレジスタンスたちだ。デススターの設計図がR2D2に渡る寸前までに、これほどの戦死者が出ていたなんて話は、70年代の観客は想像しなかっただろう。

filmarks の評価は高く、感動したというレビューがたくさんある。これはfilmarks ユーザーの若さを示している気がする。昔のスターウォーズなんて、子供騙しで物足りないのかも。

僕自身は、本作の意図はわかるがちょっとやり過ぎな気がした。終盤、2つの太陽が沈む有名なシーンとそっくりな構図で、あんなのを見せるのは悲しすぎる。

登場キャラクターの中では、見た目は巨神兵そっくりで、「戦闘タイプのC3PO」といった風情のドロイド、K2がとても良かった。唯一のお笑い担当。マッツミケルセンも良い役どころ。ドニーイェンは噂通り格好良かったが、彼の役が「盲目的にフォースの力を信じている」という隠喩だとすると悲しいなと思った。まぁ考え過ぎか。

最後に彼女が出てきたのは驚いたし嬉しかった。そして頑張れR2D2(笑)
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