安堵霊タラコフスキー

小原庄助さんの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

小原庄助さん(1949年製作の映画)
4.8
清水宏(×小津安二郎)特集が神保町で行われているということで、DVDレンタルできない今作等を見ようと思ったけど、全く不安は抱かなかったとはいえ図らずも清水作品の初劇場鑑賞となったこの作品が毎度の如く素晴らしいもので良かったと思う。

話は小原庄助さんを自称する日本版幸福の王子みたいな大河内傳次郎の人情話って感じで、それ自体でも中々笑えて良かったのだけど、それ以上に成瀬のように律儀でくどいところが全く無い抑制されたカット割りや同時代のオフュルスばりに見事なカメラワーク(特にミシン教室を横断する箇所は圧巻!)が素晴らしく、こういう映像芸術を堪能したいが為に自分へ映画を見ているのだなとつくづく気づかされる。

大河内傳次郎らの演技が自然主義的清水演出に似つかわしくなく、飯田蝶子が出てるシーンもトーキー初期の小津映画みたいで清水映画らしくない印象も最初はあったけれど、見ていくと演出や映像の質感が明らかに清水作品のそれだから全く気にならなくなるのは流石と言わざるを得ない。

あとロバが所々で存在感を発揮していたが、ブレッソンやジャック・ドゥミに先んじてロバに着目するという点でも清水宏がとんでもない監督であったことがよくわかる。

毎度毎度そうだが、清水宏は作品を見る度に敬愛の念が強まっていくから堪らない。