ryosuke

小原庄助さんのryosukeのレビュー・感想・評価

小原庄助さん(1949年製作の映画)
3.8
ロバが歩くショットを中心として田舎の風景描写に情感がある。細かい所作や言葉の中に可笑しさを見つけ出す視点が温かい。ミシンと木魚のモンタージュが気持ちいい。
大河内傳次郎の気の抜けた普通のおじさん感が実に良い。戦後の社会変化の中で実態と合わなくなった大きな屋敷を見て回る姿がどこか切なく、しとしとと降る雨が家の零落と対応する。婆やに叱られて丸くなった背中が哀しい。泥棒を投げ飛ばした後、まず最初に倒れた酒瓶を起こす挙動。とりあえず盗人にも酒を振る舞う。芸者はあれ知ってて歌ってるのかな...まあ笑えるけど。
どこまで続くのだろうと思うほど幾つも部屋を超えていく横移動撮影が二度あるが、この移動撮影が行き着く先で最後に捉えるのは、家がすっからかんになるキッカケを作る金貸しと家を出る決意をする妻という重要な局面の重要人物になっている。
ラストに「終」ではなく「始」が表示されるのは粋で感心した。確かにどう見ても物語の始まりだもんな。
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