こたつむり

ソムニア 悪夢の少年のこたつむりのレビュー・感想・評価

ソムニア 悪夢の少年(2016年製作の映画)
3.9
♪ 心からキミを愛してる
  キミに振る痛みを拭ってあげたい すべて

とても評価に悩む作品ですね。
ジャンルとしてはホラーですが、怖いけど柔らかい。優しいけど痛い。相反する要素が混在した物語なのです。

しかも、観客の心理は計算済み。
劇中で子供に対して、ある“精神的な虐待”が行われますが、製作者が無意識のうちに描いているのではなく、キチンと理解していることも語られます。

だから、納得感が違うんですよね。
B級映画にありがちな演出を選択したのも同様。一見して陳腐に思える造形にも“意図”があり、細部まで拘った結果だと分かります。

やはり、本作は傑作と呼んで良さそうですね。
思わず語りたくなる作品…これは創作物としての憧れですし、本作は少なくとも“一言”申したくなりますから、これは認めないといけません。

また、本作の魅力は副題にもある“少年”。
あどけなさと賢さが同居した表情に「天才かよ」と呟いてしまうのは必然です。

というか、後から気付きましたが。
彼は『ルーム』や『ワンダー君は太陽』に出演したジェイコブ・トレンブレイ君だったんですね。そりゃあ、納得の演技力ですよ。ガツンとヤラれるのも当然でした。白旗万歳。

ただ、あえて難を言うならば。
計算され過ぎ…つまり人工的な手触りゆえに“エモーショナル”な部分が抑制されてしまったのは…うーん。さすがにこれは高望みし過ぎなのでしょうか。

でも、この両方を兼ね備えたのが某名作。
ネタバレを避けるためにタイトルは伏せますが、作家としての本能、あるいは色気みたいものが“凄み”になるという好例です。とは言え、その筆致には賛否両論ありますが。

まあ、そんなわけで。
ホラーが苦手な人にこそ触れてもらいたい作品。僕のことは信用できないでしょうが、本作の優しさは信じてください。お願いします。ちなみに僕は“本作の存在が児童虐待を減少させる一助”になると考えました。かなりマジで。
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