せーじ

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破のせーじのレビュー・感想・評価

4.6
278本目。年末年始エヴァ祭り二作目、ということで鑑賞。




…シンジさん!!!!!となりましたねぇ。

これは当時、リアルタイムで劇場に行かれた人は、大変な気持ちになったのではないでしょうか。「序」でエヴァという物語を新たにセットアップした後に、何をしたのかと言うと、えげつない「破壊」だったなんて。
それも、それまでの前提をひっくり返すという単純なことではなく、旧劇場版やアニメシリーズでやってきたことを「破壊」していたのですよね。

序盤の「かっくいいバトル」が終わると、ぱっと見、エヴァにしてはものすごく明るくて平穏な展開が続いていて、なんなら"父子"の不和を"母"が取り持とうとする展開になっちゃったりもしていて、いいじゃんいいじゃん!って思う人も居たと思うし、クライマックスからのラストの展開には落涙した人も多いのだと思いますが…自分はこれ、観ていてドン引きしてしまいました。バッドエンドですよねこれは。
どうしてそう思うのかというと、本作全体に漂う「明るさ」は、自分には取って付けたような「ハリボテ」感が漂うものに見えたからなのです。登場人物の言動と言うか造形が、これまで見聞きしてきたそれとは少し、けれども確実にズレて見えたから、なのですよね。「こんなことを言ったりやったりする人たちだったっけ…?」みたいな。例えば旧劇場版やアニメシリーズを観てきた人にとっては「心地いいけれど明らかに異質なもの」であると感じられた人も居たのではないでしょうか。ただ、念のために書きますが、だからと言って「拙くて良くない」というつもりはありません。そうではなくこれは、作り手が様々なしがらみのなかで「自分が作ってきたものに刃を向けざるを得なかった」と言うことなのだと思います。平たく言うと作り手は「しがらみのなかでオトナになろうとしていた」のでしょう。でも…と言う話なのだと思うのです。
最終的にシンジ君が引っ張り上げた存在がどういうものだったのか、そしてそれをしたことによって、何が引き起こされようとしていたのかを考えていけばいくほど、しんどい気持ちになってしまいます。
そりゃあ庵野監督も病むよなぁと思えてしまうほどに。

※※

このコンテンツを「庵野秀明の私小説」だと捉える人は結構多いのではないかなと思いますが…だとしたらえげつなさ過ぎると思います。
創作者として、一人のオタク男性としての苦悩と叫びと孤独がぎっちりと詰まっている作品なのだと思いますね。パンツを脱ぐどころの話では無いです。そして、この先どう話が展開していくのかがちょっと怖いです。
(つづく)
せーじ

せーじ