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ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破のSUIのレビュー・感想・評価

3.5
ロードショー時に本作を映画館で観た後、ふとどんな話だったっけ?と内容が思い出せなかったのだけど、何度か見返してみてその理由がなんとなくわかったような気がする。

新キャラのマリや2号機のビーストモードと、シンジに心を開くアスカの変転といったインパクトの強い新設定が目白押しで、その思わせぶりなお膳立てや、時にダイナミックに時に繊細な演出が、スカスカな物語の隙間を補完して多幸感を錯覚させている。
有り体にいうなら、演出と展開のみで成り立っている。
だから見終わった後は「あー面白かった」となるのに、で内容は?となると、その興奮に見合う素晴らしいはずの物語が一向に見えてこないのだ。

それにしても、ゲンドウはエゴが強すぎのポンコツ過ぎて、状況を悪化させようなことしかしやがらない。
シンジに対して大人になれと説教しているけど、まずはお前が大人になれよと。
それでいて、「シンジとレイをもって初号機の覚醒がなった」などと、訳知り顔でいかにも計算通りみたいにいうけど、その意図(端的にいうなら人類補完計画の全容、あるいはそれを隠れ蓑にして暗躍するゲンドウの本懐)を明確にしてくれないことには、とてもじゃないがそういう風には見えない。

庵野監督の頭の中にしっかりとした構想があるのかないのか定かでは無いが、これまでの流れからして、物語の思わせぶりな謎に関してストーリーで明示される以上の付加物を求めるのはナンセンスだし、深掘りして考察するのは時間の無駄だ。だって、きっとそんな高尚な構想なんてとてもあるようには思えないのだから。

このシリーズと向き合うスタンスとしては、あまり深く考えずに演出極振りの単純なエンタメ作品として割り切って観る、というのが正解だ。
それなら充分楽しめる。
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