あやう

神に誓ってのあやうのレビュー・感想・評価

神に誓って(2007年製作の映画)
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イスラム映画祭2にて鑑賞。
繁華街から少し外れた、のんびりした通りに佇む映画館での上映でしたが、40名の定員に対して、100番近くまで整理券を配る大人気ぶり。この映画館が通勤電車みたいになってるの、初めて見た・・・っ!
初日ということで、主催者さんのご挨拶もありました。ラッキー。(この映画館によく通われていたようで、彼の見た中では、踊るマハラジャ&不思議惑星キンザザに並ぶ大盛況っぷりだとか。笑)

イスラム映画祭2のことはチラシを拾って偶然知ったのですが、拾ったのは上映の前日。
さらに偶然にも、「となりのイスラム」を読み終わった直後だったのです!
これは絶対見ねば!のタイミング。

なので、簡単なイスラムまわりの知識+読書の熱(とても良い本でした)もあり、大変楽しめました。ほんとよかったです。
2時間48分を突っ走るには、やはり鑑賞前にイスラム知識を少しつけておくのが良いかと思います。
ムスリムの方がイスラム教に持つ気持ちっていうのが、日本人でいう国とか、両親に対する思いのような、簡単には捨てられない、かなり根幹の部分を成しているものらしい。ということだけでも念頭に置いておくと違うと思います。(もちろん違う感覚の方もいます)
あとはコーランがどれだけ大切にされてるかとか、女性の扱いとか、基本を抑えるとより映画の世界にのめり込めます。

パキスタンの裕福な家庭で育った音楽好きの兄弟・マンスールとサルマド、そして兄弟の従兄弟で、英国生まれ英国育ちの女子メリー。
この3人の運命がイスラム教と、世界の流れに翻弄される様が描かれます。

兄は音楽の勉強でアメリカへ。平和な日々を過ごすも、2001年になり・・・
弟は自分のイスラム教徒としてのあり方に悩み、原理主義?ともいえる過激派組織に身を投じます。
そしてメリーは、ムスリムの父親の都合で、アフガニスタンに置き去りに。
3人のシーンが次々に切り替わりながら進むストーリーは、退屈する暇を与えません。

前半の音楽を使ったシーンは、イスラム圏出身といっても、私たちと変わらない今時の若者だなって思える、特に楽しいシーンでした。
後半以降はかなり辛い展開が続きますが、憂鬱さを煽るような描き方はされていません。

弟は、日本で育った私から見たら最低な行いをしてるんですが、ナイーブになる気持ちも分かってしまうので、とても悪人とは言い切れない・・・。
メリーは被害者ですが、イギリスにいたころより大きなものを見据える、たくましさが備わったと思える。もともと結構強い女性でしたけど、何かを乗り越えたような。
あれは彼女にとって良い選択になったと心から願いたいです。
兄は・・・理不尽極まりないですが、現実でもきっと、どこかで起こったことなんでしょう。
2001年以降テロは増え続け、イスラム関係の問題を遠い世界のことと思って、ぼんやり考えていたけど、登場人物に共感してしまうと、他人事とは思えないです。

ラストに希望があるか?と言われると、ストーリー上では、深く傷ついた登場人物たちも、再生の希望がある描き方をされてますが、実際の世界情勢のことを考えると、希望がある!とははっきり言えなくて。
私はそんなにグローバルに生きていないので日本人の知り合いしかいない中で生きていますが、彼らがもし将来、隣人になった時に、ふつうに仲良くできたらいいなって思います。

最後に、名古屋でも開催していただき、ありがとうございました!
あやう

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