chiakihayashi

僕と世界の方程式のchiakihayashiのレビュー・感想・評価

僕と世界の方程式(2014年製作の映画)
4.0
自閉症スペクトラムと診断された少年は、コミュニケーションの困難に加えて、大好きな父親の事故死というトラウマを抱え込んでしまう。幼い頭は数字と図形でいっぱいの彼を、多発性硬化症の発症で挫折した数学教師が指導することに。数年後、見事に国際数学オリンピックの英国代表チームの候補に選ばれた少年は、台湾でライバル中国のチームとの合同合宿へ。そこで彼が組むことになった中国チームのメンバーは、気立てがよくてしっかり者の賢い少女。やがてふたりはケンブリッジ大学での数学オリンピック本番を迎えるが・・・・・・。
主人公もさることながら、母親役のサリー・ホーキンスが絶品の演技。そうでなくても育てるのが難しい息子は、数学がわからない母親を相手にしないばかりか、ほとんど心を開こうともしない。戸惑い、ため息をつきながらも、どこまでも辛抱強く息子の気持ちに寄り添おうとし、かつ干渉にならない抑制を知る母親。言い換えれば、溢れんばかりの愛情を注ぎつつ、傍目には危なっかしい息子の人格を最大限に尊重することができる母親。それでいて、ごく普通にひとりの等身大の女性。息子が混乱の極みに陥ったときに、彼に向かい合った彼女の振る舞いには感嘆するほかない。こういう母親像に、日本の文化ではめったにお目にかかれないのは何故なのだろう。
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