ねーね

僕と世界の方程式のねーねのレビュー・感想・評価

僕と世界の方程式(2014年製作の映画)
3.5
幸せの方程式は、大切な誰かと一緒なら見つけられるのかもしれない。

幼い頃に父親を亡くし、心を閉ざしてしまった数学の天才ネイサン。
自閉症である彼は、コミュニケーションが上手くとれないまま思春期を迎える。
そんな中母親と数学教師の愛情と支え、そして淡い初恋を糧に、自らの殻を破っていく…
『リトル・ダンサー』の製作者が贈る、実話を基にしたハートウォーミングストーリー。

ネイサンは確かに所謂「普通の子供」とは少し違う。
しかし、自閉症の子供を決して特別に描くのではなく、自分の存在や愛について必死に悩む普通の少年の姿がそこにあった。
孤独に生きてきたネイサンが、数学オリンピックを通して、同じような仲間がたくさんいることや、世界の広さを初めて知っていく。
きらきらと世界が色づきだし、大切な人ができる戸惑いと喜びは、とても瑞々しくまぶしかった。

そんなネイサンと、この世界をみつめてわかったこと。
「愛すること」と「愛されること」は、幾つになってもすべてを理解するのは難しい。
みんな自分の存在価値について悩んで、振り回されて、それでも周りの誰かに救われながら生きている。
この映画の良いところは、ネイサンだけでなく、周りの大人たちの子供びた繊細な感情も、ちゃんと丁寧に表現されているところだ。
(大人である私としては、むしろ母親のほうに感情移入してしまうくらいだった)
イギリスでの原題は『X+Y』。
ネイサン=Xと、誰か=Yが重なり合うことで、人生は大きく変わっていく。
Yは特定の誰かではなく、母親、父親、チャン・メイ、ハンフリーズ先生、その誰もがネイサンの人生にとって大切な存在であると、このタイトルは示している。
そして同時に、Xもまた、ネイサン以外の誰かになりうるのである。
愛の方程式は私にもネイサンにも難しくて、とても解けそうになかったけれど、これくらい簡単な式なら理解できる。
人生はたしかに難しく複雑で、私たちを惑わせる。
だけど、側に誰かがいてくれさえすれば、こんなにも優しい(易しい)方程式が生まれるのだ。

数学や自閉症に焦点を当てるのではなく、ネイサンの成長そのものに軸をおくことで、尺の振り分けの問題だろうか、若干脚本の粗も見える。
しかし、全体的なまとまりとしては爽やかな後味で良作。
駆け出しの子役エイサ・バターフィールドの自然体な演技もすばらしく、作品の出来に一役買っていたと思う。
これからの活躍に大いに期待したい。
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