えんさん

僕と世界の方程式のえんさんのレビュー・感想・評価

僕と世界の方程式(2014年製作の映画)
3.5

数学の理解力に突出した才能を持ちながらも、小さき頃に自閉アスペルガー症候群と診断され、心を閉ざし続ける少年ネイサン。同じ頃、大好きだった父親が亡くなったことからも、彼の心は母でもこじあけることができないことに塞いだままだった。だがある数学教師の尽力により、彼の数学の能力はめきめきと開花していく。そして遂には国際数学オリンピックのイギリス代表の一人に選ばれ、台湾での数学合宿の旅に一人で向かうのだった。。「ヒューゴの不思議な発明」のエイサ・バターフィールド主演による実話を基にしたドラマ。監督は、本作が長編劇映画デビューとなるモーガン・マシューズ。

学生時代通じて、理数系にいた僕ですが、こう見えて中学時代に一番不得意だった科目が数学でした。。数学の美しさは分かるものの、大学時代などの物理演習で力学や量子学などの高次な行列式などを目の前にするとチンプンカンプンというか、よく演習の先生のところに通って、何とか騙し騙し合格点をもらえたのを昨日のことのように覚えています。物理で使われるような実用数学の世界でこれですから、高校生レベルといえども、本作のような純粋数学を使ったパズルのような問題(特に整数論とか、数列を使うようなもの)は、もはやアート的な美しさしか感じ得ないほど(笑)。しかし、「ビューティフル・マインド」や「イミテーション・ゲーム」など、過去に公開された数学を題材にした映画同様に、数学が魅せる独特の世界観と、主人公ネイサンが数学の世界を通じて出会った人々との心の交流がうまくシンクロして描かれていて、特に前半部とかは実にいい組み立てがされていると思います。

面白いのは、この映画に出てくる人々は同じ数学という世界に触れながらも、それぞれが違った対峙をしていることでしょう。主人公ネイサンは、自分の心に侵入してくる外界の音を遮るように、自分の内面空間を拡げるためのツールとして数学に触れ始めたり、ネイサンに関わってくる中国チームのパートナーは、厳しい叔父をとにかく喜ばせるように自らの才能を発揮する場であったり、ネイサンの母親は無学だったが、ネイサンと少しでも同じ世界を見るために、そして気になるネイサンの数学教師に近づくために数学に触れたりと、、数学というのが各自それぞれの人生にとって大切なツールになっている様が観ていて微笑ましいのです。別に数学じゃなくても、スポーツだったり、絵や楽器だったり、動物や車だったりと、自分の仕事や勉学に関係ないものでも、自分自身を取り戻すための大事なツールって誰しもあるものだと思います。その大切なツールの存在を気づかせてくれる作品でもあるのです。

ただ、映画のラストがああいう風になってしまうのが、少々虚をつかれたというか、数学と関わりとない世界に飛んでしまったのが個人的には残念なところ。このラストを見ると、形は違うけど、ある有名な映画のラストによく似ているな、、と思ったのは僕だけですかね。これをいうとネタバレになるような気がするので、気になる方は観てみてください(笑。