実話から生まれた名作。
これは決して自閉症のネイサンが数学オリンピックで大成功を果たすというサクセスストーリーなんかではない。
父を失った時から止まっていた彼の時間が動き出し、愛とは何なのかを自分に問いかけ始めるネイサンの繊細かつ心に訴えかけてくる愛の物語。
母の愛を疎ましく思い、真っ向から受け止めることができないネイサン。それでも歩み寄ろうとするジュリーの愛に涙が止まらなかった。母のジュリーとやっと心が通い合い、バックシートではなく自ら助手席に乗り込む。心情の変化が大きく表現された瞬間だった。
また、印象的だったのが、ネイサンから見た周りの景色が常にフレアに包まれていること。彼が普通の人とは違う特殊な物の見方をしていることの現れなのだろうか。
数学オリンピックという目標を持ったことによって閉鎖的だった彼の世界が少しずつ広がっていく。ライバル、友達、好きな人。それは決して楽しい事ばかりではないけれど、全て彼の人生。間違いなんて、何も無い。
愛する人が人生から引き算される悲しみ。それでも、人を愛することをやめてはないけないと言った父の言葉をやっと理解したのではないのだろうか。希望で満ち溢れた終わり方だった。
いい映画だった。良作◎