花波

パパ、アイ・ラブ・ユーの花波のレビュー・感想・評価

パパ、アイ・ラブ・ユー(2012年製作の映画)
3.3

人生は物語の起承転結みたいに単純じゃないし、明日も明後日もその次もその次もハッピーエンドなんてやってこないし、ただひたすらにちょっとずつ、今の場所から動こうと前に進んだり後ろに下がったりするだけだって、それが現実だって、わたしはよく思う。そうしてその現実の中でそれでも必死に藻掻く人間が、すごく愛おしいとも思うんだ。


そんな愛おしいほど人間らしい父親と、二歳の息子のささやかで切ない日常。息子のアイザックに起こされるところから、父マークの一日は始まる。


子どもって、親がいろんなことに悩んでても知らん顔でけろっと笑ってて、悲しかったら泣いて、嫌だったら怒って、とにかく自由に自由に生きているのに、親が泣いたら、泣かないでって、親を抱きしめて泣くの。げんきだして、そばにいるよって。

調べてみたら、本当の親子なんだって。だからこんなにずーっと自然体。なんで?どうして?って素直に何もかもを疑問に思って、突拍子もなく「へびってこわい?」なんて聞いてくる。そうだよなあ、わたしたちはいつから疑問に思うことが減っていくんだろう。へびってこわい?どうかな、こわいかな。


「しぬってどういうこと?」って、わたしはうまく答えられるのか、ちゃんと二歳の子どもにわかるように答えられるのか、考えたけど、たぶん答えられないんだろう、だって本当はよく、わかんないし。動かないけど身体はそこにいる、でももう会えない、って、どうやって説明しよう。もうママには会えないんだって、どうやって分かってもらおうね。


ラストが好き。この二人のこれからがこの先も、劇的な何かが起こるわけじゃなく、ハッピーエンドが訪れるわけでもなく、ただひたすらに、二人で一進一退しながら続いていくんだなって、そう思えるから。
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