事前情報がほとんどない状態で見たので、ダラダラとクソどうでもいい日常に飽きつつ、ユカちゃんのビッチぶりに引きつつ（女友達があんな子しかいないんだろうな…）、いつ本編が始まるんだろうなと思いながら見ていたら、「HIMEANOLE」のタイトルが出てきたと同時に、凄まじい暴力と理不尽の世界へと突入します。タイトルが非日常へのスイッチなんですね。素晴らしい。
この映画、暴力シーンがとてもうまいです。森田が受ける暴力も、ふるう暴力も、理不尽すぎるが、映像としてほんとうにうまい。
主人公がビッチヒロインと初体験をしている一方で、森田剛演じる殺人鬼が元友人の婚約者を殴り殺すシーンを重ねるのも、通りすがりのネーチャンを襲うのも、拳銃で撃って至近距離から外すのも（これは古谷実スタイルかな）、ムロツヨシ演ずる安藤さんを撃つシーンも、とにかく暴力表現がうまい。森田がつかみどころなく、感情が平坦で（家に押し入って夕食を取っているのは世田谷の事件を彷彿とさせる）、それだけにしみじみとした怖さがある。
森田はサイコパスというより、過去のトラウマから聞こえない声を聞き、苛まれているので、いじめという過酷な経験により精神を病んでしまったように思う。最後の「麦茶」と「犬」が、とても切ない。
原作では森田のユカへの執着の理由なども書かれているようなので、読んでみたくなった。
